立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

松井和翠編『推理小説批評大全総解説』

来たる5月6日(日)に東京文学フリマで頒布開始される松井和翠さん編の『推理小説批評総解説』の巻末座談会&アンケートに、秋好亮平さん(探偵小説研究会)と一緒に参加しました。 この本は日本のミステリ批評をオールタイム・ベスト的に70編選んでそれに解…

結城昌治『公園には誰もいない』(講談社文庫)

(承前) 結城昌治『公園には誰もいない』は、私立探偵・真木三部作の二作目。和製ハードボイルドの傑作として名高いこのシリーズの最高傑作に挙げる声もある(個人的には一作目『暗い落日』の方が好み)。 前作『暗い落日』が、ロス・マクドナルド『ウィチ…

『子規全集』(講談社)

(承前) 『ハサミ男』の巻末の参考文献はけっこういいかげん、というか、あるいは、おそらくわざと曖昧に書かれている。実際に元にあたろうと思ったら、いくつかハードルがあることは否めない。 たとえば、 『子規全集』(講談社) 1975年から78年にかけて…

ピエール=ルイ・マチユ『象徴派世代』(窪田般彌訳、リブロポート)

同人誌の感想はいくつかいただいたんですが、nemanocさんの〈孔田さんは(……)必要な文献をていねいにあたり、フィードバックして、複雑な殊能世界をときほぐしていきました。〉 という過分な言を目にして、そういえば参考文献について、スペースの関係でい…

ポー、カー、メナール、アルテ

◯ある方の示唆で松田道弘「新カー問答」を読んでいたら、カーが初期のバンコランものでフランス人を探偵役に、パリを舞台にしたことを「エキゾチシズム」と評していたのが印象に残った。というのは少し前に、ボルヘスの文章でポーがデュパンものをパリに設定…

言葉のデトックス

昨日ぐらいからインターネット上でニガテなタイプの文章に立て続けに出くわしてしまい、アタマの防衛本能なのか、ゾゾゾ―っという拒否感が抜けないので、私自身のデトックスのためにこちらに箇条書きに放置しておくことにします(それぞれの項目は互いに別個…

一年の計

この前の正月にボルヘスの本をいくつか読んでいたら、様々な想念が去来した。以下はその雑多な念を覚え書きとして書き付けるものである。 * 幼い子供に「こんな勉強、して何の意味があるの? 大人になっても使わないでしょ?」と聞かれたらどう答えるか。今…

『立ち読み会会報誌』第一号(改訂再版)についての情報

『立ち読み会会報誌』第一号の改訂再版についての詳細が固まったので、お知らせします。 * 表紙は以下の通りです。 配色は前回の新訳版『ナイン・ストーリーズ』イメージからガラッと変えて、邪神イメージにしてみました。 * また今回は、誤字脱字の修正の…

横田創による七年ぶりの新刊は短篇集『落しもの』(書肆汽水域、2018) 『落としもの』横田創 – 書肆汽水域 『埋葬』(2010)以降いくつか書かれていた短篇も「丘の上の動物園」(「すばる」2013年12月号)以来発表がなかったので気になっていたのですが、収…

狭義の叙述トリックとその他の分類――「叙述トリック」についてのメモ(8)

(6)で書いたことを、より詳しめに整理してみよう。 以下でとりあげる概念は巷間、「どんでん返し」だとか「叙述トリック」だとかと呼ばれて色々混同されているが、それらは実は各々異なると示すことで、議論をスッキリさせたいというのが私の目的である。…

小沼丹『更紗の絵』

読み初めは小沼丹『更紗の絵』(講談社文芸文庫、2012)。1972年あすなろ社刊の長篇の文庫化。自伝的小説で、戦後直後からだいたい十年間ぐらいの教師生活を基にしたもの。文庫版あらすじには「青春学園ドラマ」とあるが、別に生徒との熱い交流が描かれてい…

今年読んで印象に残ったもの

印象に残ったものをだいたい読んだ順に。 山城むつみ「ベンヤミン再読」室井光広『零の力』さそうあきら『バリ島物語』1加藤典洋『増補 日本人の自画像』岩波現代文庫多島斗志之『黒百合』創元推理文庫國分功一郎『中動態の世界』金井美恵子『カストロの尻』…

俺はANATAだ

文学フリマで買った『幻影復興』という清涼院流水特集をした同人誌のオマケ冊子を読んでいたら、とても懐かしい気持ちになった。 東京流通センター――通称TRCの第2展示場、エスカレーターで2階に来たあなたは、チラシ置き場の脇を通り、数多くテーブルが…

藍川陸里さんの『探偵はその手を汚さない』(アミラーゼ、2017。私家版)を読みました。 これは北大推理小説研究会所属の方(来年卒業だとか)が今年書かれた(そして11月23日の文学フリマで頒布された)、黒岩涙香以来現在までの日本のミステリの歴史をたど…

クリスマスイブに『加藤郁乎俳句集成』(沖積舎、2000)をなぜかぶっ続けで読んでたらヘトヘトになってしまいました。 『立ち読み会会報誌』第一号改訂再版の追加内容は全部完成したので、あとは周辺情報が固まりしだいここに書きます。

ジェルジ・リゲティの『グラン・マカーブル』

ジェルジ・リゲティのオペラ『グラン・マカーブル』は、『黒い仏』を再読する上では欠かせない作品であるが、日本語で読めるものとしてはたぶん以下の資料が詳しいのじゃないかと思う。 * 全編のテクスト(日英対訳)としては、巻末文献にも挙げられている…

そういえばピエール・ド・マンディアルグの短篇『満潮』は私はアルフォンス・イノウエの挿画が入っている奢灞都館の普及版(正方形くらいのかたちのうすい仮フランス装のもの)で読んだんですが、これは若い男が少女を騙くらかしてひと気のない海辺に連れて…

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(安藤元雄訳、白水uブックス、1989)。上京した夜に初めて買った本だから、九年近く前か。裏の見返しに「500円」というシールが貼ってあるが、この古書店ももうない。グラック28歳のデビュー作で、1938年刊。は…

このミステリ評論が読みたい!

今、こういうミステリ評論があったら読みたい。 ◯社会派推理小説入門:「社会派」の定義、語源、発展と衰亡ないし拡散までの歴史とブックガイド。必然的に「本格冬の時代」についても扱う。 ◯叙述トリック入門:「叙述トリック」の定義、語源、発展と衰亡な…

il miglior fabbro

「私にまさる妙手」は寿岳文章訳の『神曲』だよ、と昨日教えていただいたので、ついでに調べてみました。 「il miglior fabbro」とはダンテ『神曲』煉獄編第26歌(117行目)の語句だが、これはどういう意味か。作中でダンテが自身よりおよそ一世紀前に活躍し…

「『私にまさる妙手』に敬意を込めて」について、

そういえば、なぜいきなりエリオットの『荒地』の話題をしたのか、このブログには書いていなかったので、わかりづらかったかもしれない。 というのは、『立ち読み会会報誌』第一号を加筆修正するために調べ物をするうち、私は積年の謎、すなわち『美濃牛』冒…

中村光夫『藝術の幻』

蔵書整理のために本棚をいじっていたら以前集めた中村光夫の本がいくつか出てきた。中村光夫という人の著作は私は金井美恵子のエッセイから入ったのだが、これまでは読んでも意識が言葉の表面をつるつると滑ってゆく感じで、なかなかとっかかりを見つけるこ…

ローレンス・スーチン編『フィリップ・K・ディックのすべて』

フィリップ・K・ディック著/ローレンス・スーチン編『フィリップ・K・ディックのすべて ノンフィクション集成』(飯田隆昭訳、ジャストシステム、1996)を読んだ。微妙なタイトルだが原題はThe Shifting Realities of Philip K. Dick: Selected Literary an…

たとえばポップミュージックにおいて、日本語だとこなれない表現も英語だとストレートにいえる、という事態がある。仮に「ラブアンドピース」という語を思い浮かべてみる。なぜ「愛と平和」だと(なんか違う)ということになってしまうのか。なぜアルファベ…

アーサー・シモンズ『完訳 象徴主義の文学運動』

T・S・エリオット『荒地』からの流れで、アーサー・シモンズ『完訳 象徴主義の文学運動』The Symbolist Movement in Literature(山形和美訳、平凡社ライブラリー、2006)を読んだ。エリオットは学生時代、この本でジュール・ラフォルグを知ったことから重要…

『立ち読み会会報誌』第一号についてのその後の情報

文学フリマでの販売以来、おかげさまで好評いただいております。 お読みくださった皆様、ありがとうございます。 本日、文学フリマ東京で入手した本で、一番、面白かったのはやはり孔田多紀『立ち読み会会報誌第1号 特集:殊能将之(その1)』です。インタ…

梶龍雄『浅間山麓殺人推理』

梶龍雄『浅間山麓殺人推理』(徳間文庫、1988/『殺人への勧誘』光風社ノベルス〉、1984の改題)読み終わり。これはいつもとは趣向が変わっていて、枠物語ふうになっている。冒頭、浅間の山荘に集められた男女五人がいきなり銃で狙撃される。彼らはみな、殺…

なぜかはわからないのだが、自分が中高生くらいのころに若手として何冊か書いていた日本の作家の小説を突発的に読み返したい衝動に駆られている。竹野雅人とか引間徹とか清水博子とか。作品数が少いから(未収録ものも含めて)、全部読んだらここに何か感想…

『立ち読み会会報誌』第一号通販情報

書肆盛林堂さんに通販委託をお願いしました。 seirindousyobou.cart.fc2.com ※ 申し訳ないですが、早々に売り切れてしまったようです。チト検討させて頂きます。。。

『立ち読み会会報誌』第一号の訂正

以下、気づいた個所を順次掲載していきます。もしご存知の方がいらっしましたら、ご教示いただけますと幸いです。 * 【巻頭インタビュー 磯達雄氏に聞く】p22 〈孔 そういえばついこの前、『黒い仏』が出てすぐの頃の新聞に、この下にある丸善丸の内本店の…