立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

『立ち読み会会報誌 第一号(改訂再版)』のBOOTH情報

次回11月の東京文フリにも参加できませんでしたので、既刊『立ち読み込み会報誌 第一号(改訂再版)』をBOOTHで通販することにいたしました。 まだお持ちでなくご希望の方は、何卒よろしくお願いいたします。【目次】 序 立ち読み宣言 巻頭インタビュー 磯達…

「推理」小説か、推理「小説」か?

以下はいつものように思いついたことを試論というか一晩で走り書きしたものです。 *〈「推理」小説か推理「小説」か〉という評言を初めて見たのは学生時代、おそらく何かの文庫解説(1980年代のミステリ小説だったはず)で、以来、似たようなフレーズを見か…

青山文平『半席』

青山文平『半席』(新潮社、2016)。私はふだんあまり時代小説は読まなくて、この著者も初めてです。この本は出た当初から「ワイダニットの秀作」の呼び声高く、そのうちいずれと思ううちもう文庫化されてしまったので、それを契機に読んでみました。 時代は…

ハサ医師アンソロの宣伝

笹木志咲紫さん主宰のハサ医師アンソロジーに参加しました。 9月23日東京流通センター(TRC)【奇想館 第六篇】にサークル参加します! https://t.co/tr7SlLzdDqハサ医師アンソロで絶対最高の平成にしような pic.twitter.com/SRWZBXZj0n — 咲紫:9/23U01 (@sasa…

急に早川書房の「異色作家短篇集」を読み直すことになったので、こちらに備忘録を書いておくことにする。 以下は初刊時の作家17人の生没年月日をコピペして年長順に並べ直したもの。 * ジェイムズ・サーバー(James Thurber 1894年12月8日 - 1961年11月2日…

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』

【本書の趣向に触れている箇所があります】 第53回メフィスト賞受賞作。 読み始めればすぐにわかるが、本作はメタフィクションだ。2000年前後の一時期、メタフィクション(あるいはメタミステリ)が持ち上げられる傾向があったが、メタフィクションだから新…

「文學界」2018年9月号に、金井美恵子が『「スタア誕生」』刊行記念で6月にB&Bで野崎歓と行なった対談が載っているのを読んだ。 面白かった。 しかしこの対談は様々な話題が数珠つなぎ式につながっているので、いざ紹介しようと思うと、なかなか部分だけでは…

山村正夫『断頭台』

表題作を読んで、かつてスタンリイ・エリン『特別料理』の1982年版訳者(田中融二)あとがきにあった「よほどバカでもないかぎり二ページも読めば作者が何を書くつもりでいるのか見当がつくので、徹頭徹尾ムードで、読ませる作品」という言葉を想起した。そ…

ゴーストライター、ゴーストシンガー

たまにはベストセラーでも立ち読みして現世に対する怒りの力を取り戻すかと思い、書店の自己啓発コーナーで堀江貴文の『多動力』という本をパラパラめくっていたら、フシギな記述に遭遇した。 この本の割と最初の方で、堀江は自分の執筆方法について解説して…

ウィリアム・ギャディス『カーペンターズ・ゴシック』

ウィリアム・ギャディス『カーペンターズ・ゴシック』(木原善彦訳、本の友社、2000)。この小説の邦訳書がほしいなあと思いながら数年探してもまったく手に入らないので、しょうがないから図書館で借りて読んだ。といっても、どういう内容だか事前には全然…

澤木喬『いざ言問はむ都鳥』

1 さいとうななめ改め織戸久貴サンが以前言及していたから評判だけは知っていて(いま検索したらその言及はもう四年前だった)、フト思いたって読んだら大変すばらしかった。 著者は1961年生まれというから親本刊行時(1990年)は28~29歳だったのではない…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(講談社タイガ、2017)を読んだ(実は読んだのは二か月前ですが、ぼやっとしているうちにもう続刊が出たらしいので、急いで一巻目の感想を書き付けます)。 この小説はフシギな構造をしていて、主人公(三人称視点人物)の…

松井和翠編『推理小説批評大全総解説』

来たる5月6日(日)に東京文学フリマで頒布開始される松井和翠さん編の『推理小説批評総解説』の巻末座談会&アンケートに、秋好亮平さん(探偵小説研究会)と一緒に参加しました。 この本は日本のミステリ批評をオールタイム・ベスト的に70編選んでそれに解…

結城昌治『公園には誰もいない』(講談社文庫)

(承前) 結城昌治『公園には誰もいない』は、私立探偵・真木三部作の二作目。和製ハードボイルドの傑作として名高いこのシリーズの最高傑作に挙げる声もある(個人的には一作目『暗い落日』の方が好み)。 前作『暗い落日』が、ロス・マクドナルド『ウィチ…

『子規全集』(講談社)

(承前) 『ハサミ男』の巻末の参考文献はけっこういいかげん、というか、あるいは、おそらくわざと曖昧に書かれている。実際に元にあたろうと思ったら、いくつかハードルがあることは否めない。 たとえば、 『子規全集』(講談社) 1975年から78年にかけて…

ピエール=ルイ・マチユ『象徴派世代』(窪田般彌訳、リブロポート)

同人誌の感想はいくつかいただいたんですが、nemanocさんの〈孔田さんは(……)必要な文献をていねいにあたり、フィードバックして、複雑な殊能世界をときほぐしていきました。〉 という過分な言を目にして、そういえば参考文献について、スペースの関係でい…

ポー、カー、メナール、アルテ

◯ある方の示唆で松田道弘「新カー問答」を読んでいたら、カーが初期のバンコランものでフランス人を探偵役に、パリを舞台にしたことを「エキゾチシズム」と評していたのが印象に残った。というのは少し前に、ボルヘスの文章でポーがデュパンものをパリに設定…

言葉のデトックス

昨日ぐらいからインターネット上でニガテなタイプの文章に立て続けに出くわしてしまい、アタマの防衛本能なのか、ゾゾゾ―っという拒否感が抜けないので、私自身のデトックスのためにこちらに箇条書きに放置しておくことにします(それぞれの項目は互いに別個…

一年の計

この前の正月にボルヘスの本をいくつか読んでいたら、様々な想念が去来した。以下はその雑多な念を覚え書きとして書き付けるものである。 * 幼い子供に「こんな勉強、して何の意味があるの? 大人になっても使わないでしょ?」と聞かれたらどう答えるか。今…

『立ち読み会会報誌』第一号(改訂再版)についての情報

『立ち読み会会報誌』第一号の改訂再版についての詳細が固まったので、お知らせします。 * 表紙は以下の通りです。 配色は前回の新訳版『ナイン・ストーリーズ』イメージからガラッと変えて、邪神イメージにしてみました。 * また今回は、誤字脱字の修正の…

横田創による七年ぶりの新刊は短篇集『落しもの』(書肆汽水域、2018) 『落としもの』横田創 – 書肆汽水域 『埋葬』(2010)以降いくつか書かれていた短篇も「丘の上の動物園」(「すばる」2013年12月号)以来発表がなかったので気になっていたのですが、収…

狭義の叙述トリックとその他の分類――「叙述トリック」についてのメモ(8)

(6)で書いたことを、より詳しめに整理してみよう。 以下でとりあげる概念は巷間、「どんでん返し」だとか「叙述トリック」だとかと呼ばれて色々混同されているが、それらは実は各々異なると示すことで、議論をスッキリさせたいというのが私の目的である。…

小沼丹『更紗の絵』

読み初めは小沼丹『更紗の絵』(講談社文芸文庫、2012)。1972年あすなろ社刊の長篇の文庫化。自伝的小説で、戦後直後からだいたい十年間ぐらいの教師生活を基にしたもの。文庫版あらすじには「青春学園ドラマ」とあるが、別に生徒との熱い交流が描かれてい…

今年読んで印象に残ったもの

印象に残ったものをだいたい読んだ順に。 山城むつみ「ベンヤミン再読」室井光広『零の力』さそうあきら『バリ島物語』1加藤典洋『増補 日本人の自画像』岩波現代文庫多島斗志之『黒百合』創元推理文庫國分功一郎『中動態の世界』金井美恵子『カストロの尻』…

俺はANATAだ

文学フリマで買った『幻影復興』という清涼院流水特集をした同人誌のオマケ冊子を読んでいたら、とても懐かしい気持ちになった。 東京流通センター――通称TRCの第2展示場、エスカレーターで2階に来たあなたは、チラシ置き場の脇を通り、数多くテーブルが…

藍川陸里さんの『探偵はその手を汚さない』(アミラーゼ、2017。私家版)を読みました。 これは北大推理小説研究会所属の方(来年卒業だとか)が今年書かれた(そして11月23日の文学フリマで頒布された)、黒岩涙香以来現在までの日本のミステリの歴史をたど…

クリスマスイブに『加藤郁乎俳句集成』(沖積舎、2000)をなぜかぶっ続けで読んでたらヘトヘトになってしまいました。 『立ち読み会会報誌』第一号改訂再版の追加内容は全部完成したので、あとは周辺情報が固まりしだいここに書きます。

ジェルジ・リゲティの『グラン・マカーブル』

ジェルジ・リゲティのオペラ『グラン・マカーブル』は、『黒い仏』を再読する上では欠かせない作品であるが、日本語で読めるものとしてはたぶん以下の資料が詳しいのじゃないかと思う。 * 全編のテクスト(日英対訳)としては、巻末文献にも挙げられている…

そういえばピエール・ド・マンディアルグの短篇『満潮』は私はアルフォンス・イノウエの挿画が入っている奢灞都館の普及版(正方形くらいのかたちのうすい仮フランス装のもの)で読んだんですが、これは若い男が少女を騙くらかしてひと気のない海辺に連れて…

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(安藤元雄訳、白水uブックス、1989)。上京した夜に初めて買った本だから、九年近く前か。裏の見返しに「500円」というシールが貼ってあるが、この古書店ももうない。グラック28歳のデビュー作で、1938年刊。は…