立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

記録シリーズ

【記録シリーズ20】「昔々、あるところで、……」

「昔々、あるところで、……」と始まる話を初めて聞かされたのはいったいいつのことか、誰に、どんな内容を語られたのか、いい加減忘れてしまったのですが、いや、もともと記憶に残るものでもなかったのかもしれませんが、そんな寝物語をしてもらうこともすっ…

【記録シリーズ19】ある本

パスカル・キニャール『音楽への憎しみ』にはアウシュビッツで用いられた音楽の記述があるが、以前そのあたりのことを調べていた時、日本で書かれた小説があることを知った。 http://www.jannu.jp/books/ がそれで、今日たまたまこのサイトに辿り着いて知っ…

【記録シリーズ17】イニシャル

つい先ほど、ある人物と自分のイニシャルが同じだということに初めて気がつき、夜道を歩いていた最中だったが、ふと衝撃を受けて、立ち止まった。 なぜなら私はこの日、昼から、様々な暗合について考えていたため。そして、その人物と関係の深い別の人物に手…

【記録シリーズ16】論理の運用について

nemanocさんの示唆で、SFとミステリに関連する次の二つのまとめを読んだ。 「狂人の論理」と「異世界本格」 「魔法」を物語の中で”科学的・合理的”に描写するには 雑多な議論のため言葉が曖昧なままごちゃごちゃしている印象も強いが、ここには、関心のある…

【記録シリーズ15】十月

十月のある朝、いつものように職場近くのO駅で降りた。改札を出てすぐ横断歩道の信号が点滅しているのに気づき、急いで渡ろうとしたところへ、とつぜん、烈しい風が目の前を通りぬけた。 砂ぼこりが押し寄せ、思わず顔をしかめているあいだに赤に変わった。…

【記録シリーズ14】シンパシー

宮沢賢治の有名な「雨ニモ負ケズ」にこういう一節がある。 東ニ病気ノコドモアレバ 行ッテ看病シテヤリ 西ニツカレタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ 南ニ死ニサウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ 北ニケンクヮヤソショウガアレバ ツマラナイ…

【記録シリーズ13】ノスタルジア

高校生だったころ何度か、初めて読む小説なのに、ある一節で強いデジャ・ヴ感を覚えたことがあった。 なんだか自分の頭の中身がこぼれでたのを再び眼から吸いとるようで、かなり混乱したが、よく考えればなんのことはない、そのちょっと前にラジオで朗読され…

【記録シリーズ12】鳥目

前回のジャック・イベールの話を再読した後、しばらくして「鳥といわゆる鳥目とはいったいどういう関係になっているのだろう?」という疑問がふと湧いた。鳥目の“鳥”はニワトリのことを指すのだろうが、夜行性の鳥なら沢山いる。ナイチンゲールもおそらくそ…

【記録シリーズ11】鳥

ロラン=マニュエル おっしゃるとおり。わたしはただナイティンゲールの歌はわれわれの音階の音程の中に正確にかき込めないと言いたかったのです。ナイティンゲールにしてみれば、自分の言葉は、空気のごとく、自由なのですね。だが、われわれの音楽はひとつ…

【記録シリーズ10】密室

「レゴブロック的走り書き」のシリーズは途中で飽きてきたので、やめにします。 ※ ある男が評伝作者に問いかける。「あなたの書いた亡命作曲家についてのあの本をこの前読み返したんですが、一つ重大なことに気がつきました。肝心の、作曲家がどのようにして…

【記録シリーズ9】続々々・レゴブロック的走り書き

また話がズレた。今回いいたいのは結局、「交換可能性」に関してだ。ある要素や素材の歴史性や個別具体性を捨象していくと、ツルツルしたレゴブロックのようなものとして扱えるようになり、それを確固たる形式に代入すれば何かがガラガラポンと出てくる。そ…

【記録シリーズ8】続々・レゴブロック的走り書き

以前何かの文庫解説で、「推理小説はまず、〈推理〉小説である前に、推理〈小説〉であるべきだ」というフレーズが紹介されていた(懐かしい……)。うなずけるところもないではない。ただのパズルに留まるな、ということが言いたいのだろう。しかしそれに「人…

【記録シリーズ7】続・レゴブロック的走り書き

物心ついた時には、すでにその形式がそれなりの時間の厚みとともに存在した。どうやら自分のやって来る前には、ここを通っていった先達が数えきれぬほどいたらしいのだ……。 ほとんどの人間はそこから何かを始める。先人の実験例や、形式に対する世間の評価は…

【記録シリーズ6】レゴブロック的走り書き

先日、学生時代に書いた短篇(ミステリ)をパラパラめくっていたら、当時の自分の見えなかったものに思い当たった。その頃の自分は、ミステリを書くというのは、思いついたあるアイデア(たとえばトリックやシチュエーションやストーリー)をただ展開させる…

【記録シリーズ5】駄洒落について

「健全なユーモア精神と幼稚な駄洒落とを区別せよ」 あるエッセイでこんな一節を読んで、ふと疑問を覚えたんだ。なぜなら、ぼくの考える駄洒落はそういうものじゃなかったから。ぼくは駄洒落が好きだ。自分でもよく言う。ネットにも書くし、周りの人びとにだ…

【記録シリーズ4】ズッキーニ

丸々としたズッキーニを見るといつも、 「それはキュウリじゃねえ」 とチバユウスケふうに歌う男の声がどこからともなく聞こえてくる。

【記録シリーズ3】盲目の作曲家

「盲目の作曲家」というフレーズがふいに思い浮かぶが、自分は盲目について、また作曲家についてもあいにく知るところが少ない。

【記録シリーズ2】二つの影

夜、高架橋の下を歩いていると、私の体が目の前の薄暗い地面に二つの影を投げているのに気づいた。柱側に連なる左右の電燈から、つまり二つの角度から背を照らされているためだろう。これが三つの角度なら三つの、四つの角度なら四つの影が原理的に考えてで…

【記録シリーズ1】青い薔薇

更新頻度を上げるために、新シリーズを始める。仮に「記録シリーズ」と題を借用する。 この一年ほど、何か思いついたらTwitterにて連投することが多かったため、あとで振り返ろうと思ってもなかなか検索しづらい……ということが起こりがちだった。そこで、短…