立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

例のエレベーター

ブックデザインにおいて装画と装幀は基本的に分かれている。 そして本というのはこれだけ出ているので、意図的にか偶然にか、別の本で同じ装画、というバッティングも時折ある。 たとえば、『夢野久作全集1』(1992年刊)と竹中労『琉球共和国』(2002年刊…

初秋と海と

海。 とたった一文字記すだけでなにやら私の中に潮が満ちてくるのを感じる。 二十歳になる前まではよく一人で渚へ出た。 人影のあることはほとんどなかった。 波打ち際に足の裏を向け両腕をだらしなく伸ばしたまま横に浮かんで水温二十度の海面から顔だけを…

日記について・後記

中井英夫『とらんぷ譚』を読んでいたら、年始にアップした「二十歳」のヴァリエーションみたいなものが思い浮かんだので、バーっと書いてみました。 http://d.hatena.ne.jp/kkkbest/20150818/1439916334 あとでパブーにまとめます。 ※ まとめました。 http:/…

日記について

1 他人の日記を読んだことのない者がいるだろうか? ――というとき、まず私が想定しているのは、主に本のかたちで公刊されたものだけれど、それに限ったとしても、これまで読んできたさまざまな日記があれこれと思い浮かぶ。 戦中のもの、学生時代のもの、病…

覆水盆に返らず

8月も中旬となれば、いわゆる夏休みが40日ある小・中・高生にとっては、無限にあると思われた時間がもう半ばを過ぎたと、毎年痛感させられたものです。 ※ ところで昨年、某氏のブログにアップされたライトノベル風短篇を読んで、 「自分もライトノベル風短篇…

後輩にあたる伊吹亞門さんという方がミステリーズ!新人賞を受賞したそうです。おめでとうございます。 http://www.tsogen.co.jp/award/mysteries/ 受賞作は10月発売の「ミステリーズ!」に掲載されるそうです。短篇の新人賞は本にまとめるのにだいぶ時間が…

「叙述トリック」についてのメモ(2)

「叙述トリック」という言葉が指すもの 「叙述トリック」という言葉は広く使われながら、論者によってその指し示す意味が微妙に異なるらしい。私も詳しくはないけれど(妙なところはご指摘ください)、とりあえずここでは我孫子武丸「叙述トリック試論」の定…

唐突に「叙述トリック」についての云々http://d.hatena.ne.jp/kkkbest/20150729/1438166625をぶち上げてしまったので、せっかくだからいろいろ読んでみようと取り寄せているところ。 斎藤栄の「ストリック理論」は名のみ知っていたので『新版 ミステリーを書…

「叙述トリック」についてのメモ(1)

「叙述トリック犯罪学教程」 叙述トリックについての考察はネット上にもかなり有益な考察があるけれど、最近「あざらしさん( @azarashidayou )による叙述トリック犯罪学教程」http://togetter.com/li/433684(以下「教程」と略す。また「叙述トリック」に…

ゲンロンカフェのイベントhttp://togetter.com/li/851931、なぜか開始時間を終了時間と勘違いしてしまい、一時間遅刻してしまった。 せっかくなのでタイムシフトで見ようかなあと思うものの、パソコンも持っていないような人間なので、どうやって視聴すべき…

XINLISUPREMEが三年ぶりに突如発表した新曲「I AM NOT SHINZO ABE」http://youtu.be/_VxirgFBUuc。 「SEASIDE VOICE GUITER」から数えれば五年ぶりとなるのだろうか、ノイズにまみれたまぎれもないシンリ節にテンションがブチ上がっていたら、その晩の夢に安…

ピエール・ルメートル『その女アレックス』をやっとこ読む。最後でムムーンとうなってしまう。警察のあの対応はアリなんでしょうか。あとで『死のドレスを花嫁に』も読んでみます。 ※ 河添太一『謎解きドリル』の最終三巻がいよいよ来週。 ウェブで遅ればせ…

麻耶雄嵩の新刊『あぶない叔父さん』は未読なんですが、ネマノさんの感想を読んでいたら次のようにあったので笑った。 縛りのなかで最大限読者を楽しませようと苦心はしていて、あの枠内では最大限機能している。豪腕ですよね。誠実ですよね。「最近の麻耶は…

古井由吉『仮往生伝試文』が講談社文芸文庫入り。文庫にならないのではないかと思っていた。 http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062902786 ※ 黒田夏子『感受体のおどり』も『abさんご』と併せもう文庫になっているそうです。 http://books.bu…

一段落したので、また何かしら読んだりできるであろう。というか、『記念日の本』がいい加減読みたいっす(まだ最初の一編しか読んでない)。あと、「フランスミステリの勘違い」も確かめたいなあ。 ※ 新刊『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』はもう出てい…

apple musicを試しつつ、聴ける曲と聴けない曲を探しているところ。YouTube以来の黒船感で、まだどう受け止めていいのかよくわからない。邦楽については今のところ一応、マイナーな音楽はあまりないものの、「メジャーなミュージシャンのアルバムでしか聴け…

死んだ僕の彼女の「彼女が冷たく笑ったら」のMVは以前にも再生したことがあったんだけど、内容を初めてちゃんと観たら、サイコ・ミステリ風になっていてビックリした。 特に3:10くらいからの展開は割とベタな反転をきっちりやっている感じで、嬉しくなってく…

クリスタル・キングの「大都会」を初めてちゃんと聴いてみたところ、あまりの名曲ぶりに打ちのめされている。 今まで全く知らなかったんだけど、バックはほとんどプログレですね。プログレ特有の哀愁みなぎる演奏もさることながら、スマートフォンで観ていて…

ジョージ・ミラー監督『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』(2015) 私の観たのはこういう形式http://t.co/MKNG42t8KJで、単に音がデカイんではなく「出るとこは出て引っ込んでるとこは引っ込んでる」という感じだったらしい。後で振り返ると、「これ以…

『殊能将之読書日記』が発売されたそうです。

『殊能将之 読書日記 2000-2009 The Reading Diary of Mercy Snow』をようやく入手。やっと出た! 本文以外にも解説や索引や考課表が80頁くらいあって豪華。情報量と元手を考えればかなり安いほうじゃないかなあ。 ※ さっそく法月綸太郎解説を開いたものの、…

十階堂一系『赤村崎葵子の分析はデタラメ』(電撃文庫) TLで評判が良かった作品。高校の「分析部」という独自のグループに所属するヒロインと主人公を軸に、ラブレターの指定場所になぜ誰も来なかったのか/サラリーマン風の男はなぜ一万円も募金したのか…

『殊能将之読書日記』は無事に今月、刊行されるようですね。 https://twitter.com/tatsuoiso/status/611816497942409218 なぜか版元サイトではずーっと(今現在も)カバーイメージが不明のままだったので、この十日ほど、推測をここに書こうとしては(でも数…

沢村浩輔『夜の床屋』(創元推理文庫。文庫化にあたって『インディアン・サマー騒動記』から改題) ミステリーズ!新人賞受賞の表題作を冒頭に、前年に最終候補となった「『眠り姫』を売る男」を終盤に配置してそのあいだを書き継ぎ連作化したもの。確かに『…

『紫藤はるか短編集』(あじさいノベルス)を読む。 題名通り、紫藤はるかさんという作者が同人誌に書いたものをまとめたもの+αの電子書籍。 エアミステリ研究会というネットサークルの方々をいつ頃からフォローするようになったかはすっかり忘れてしまった…

殊能将之を再読する/「鏡の中は日曜日」(5)

【殊能将之『鏡の中は日曜日』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 おさらい だいぶ間が開いてしまったので、ちょっとおさらいから。 二年前に『ハサミ男』を再読して以来たびたび、作中に「ズレ」というモチーフが現われることに気づいた…

鮎川哲也の『りら荘事件』を読んだのはたぶん十年くらい前か、当時は講談社文庫版が品切れになっていて、古本屋で買ったと思う(しばらくして創元推理文庫からも出た)。今回、角川文庫に入って『リラ荘殺人事件』と改題されたバージョンがあるのを初めて知…

青木淳悟の新刊『匿名芸術家』は今週発売だけど、群像の書評http://gunzo.kodansha.co.jp/39016/41699.htmlによると、デビュー作「四十日と四十夜のメルヘン」も同時収録されているらしい。この本の新潮文庫版は二年足らずで絶版になってしまったので、新刊…

浦賀和宏の新作『究極の純愛小説を、君に』を読み終わる。 いやー、結末の受け止め方に迷ってしまいました。この小説は基本的に、高校の文芸部員・八木剛を中心としたスラッシャー小説と、失踪人を探す保険調査員・琴美の捜索小説という二つが前後にくっつい…

『究極の純愛小説を、君に』を買ってすぐにパラパラめくっていたら、帯文の通り浦賀和宏という人が出てきた。しかも失踪するらしい。閉じ込められたり食べられたり、世の中に浦賀和宏さんはいったい何人いらっしゃるんでしょうか。 『姫君よ、殺戮の海を渡れ…

講談社のサイトに読書日記のページができていましたが、やっぱり24日みたいですね。この価格だと、『アガサ・クリスティー完全攻略』のように箱がつく仕様なのかしら……って、書いてて思ったけど、これってもしかすると何か没後受賞の可能性ワンチャンあるん…

瀬川コウ『謎解き乙女と奪われた青春』 ドラマが主体の感じでミステリとしてのトリックはそれほど大きくなく、また私はスクールカースト云々というような話はニガテだけども、二人が決別してからはドライブがかかり、読み切ってしまった。ところで中学時代に…

dCprGと改名したデートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの新作『Franz Kafka's South America』。ところで南米というとちょうど十年前の『南米のエリザベス・テイラー』は、ポスターを部屋に貼っていたくらいよく聴いていました。今回はまだ聴きこめ…

法月綸太郎『法月綸太郎の功績』を十年ぶりくらいに読み返していたら、「都市伝説パズル」にSSRIとかプロザックとかいう単語が出ていることに初めて気づいた。前はわからなかったなあ。 ※ さいとうななめ氏による『謎解きドリル』解説。 http://d.hatena.ne.…

河添太一『謎解きドリル』1、2巻を再読。初読時より面白かった。 この作品について、作者はこういうふうに語っている。 僕は元来おしゃべりな性格で、ネットなんていう簡単に意見を発信できる媒体があればそれはもう自分の作品について、 「ここを見て!」…

木曜夜に「アウト・デラックス」でふかわりょうゲスト回を観たら、なかなか興味ふかかった。 私は「芸能IQ」というのは、演者本人から見た自分と、観客から見た自分との距離を即座に察知し、より面白いと思われるほうへスライドしていく能力のことではないか…

ウィトゲンシュタインの講義が即興だったというエピソードを読んで、あることを思いついた。推理小説の解決シーンで探偵が話す行為は、語り言葉による聞き手へのパフォーマンスといえないだろうか。もちろん、それは即興というわけにはいかないから、一見正…

佐々木中の講演集『仝』を読んでいたら、ウィトゲンシュタインは即興で講義をしていたという話が紹介されていた。 彼の講義って完全なアドリブだったんだそうです。いきなり講義室にやってきて、「前回どこまで行ったっけ?ああ、そうか。判った。では続きを…

memoの再読は長い中断を挟んで2006年半ばまできた。6月前半に、『DEATH NOTE』の映画化についての記述がある。 「DEATH NOTE」が藤原竜也主演で映画化されるそうな(金子修介監督、2006)。 日本映画界には「人殺し高校生役は藤原竜也」の法則があるのかな。…

書店で『ジーン・ウルフの記念日の本』とレム『短篇ベスト10』が隣に並んでいるのを見かけた。この二人の著作が新刊(しかもこのシリーズ)として出ると(そして来月に『読書日記』まで出るとなれば)、自分が受験生だった2004年の夏を思い出す。あの年は、 …

友人に誘われAPOGEEと80kidzのツーマン@渋谷lamama。APOGEEはもう七年前になるか、セカンド時にフリーライブに当たったのにバイトが抜けられず、そうこうしているうちに活動休止期に入ったので見るのは初。昨年のアルバムは打ち込み主体でそこからの曲が多か…

さいとうななめ氏の推す河添太一『謎解きドリル』をコミックス二巻まで。一読したところあまりピンと来ず、後でななめ氏や作者の言葉から、トリックやロジックより「演出」「構成」に主眼があるらしいとボンヤリわかりかけてきた。とりあえず再読します。 ※ …

最近どうも気力が湧かないので、一昨年みたいにしばらく雑談を書き留めることにします。 ※ syrup16gの新譜『Kranke』を聴く。リード曲の「冷たい掌」https://www.youtube.com/watch?v=gk02WpyN_Qoは最初、リズムチェンジとコードチェンジに気を取られ、聴き…

初期衝動についての断章

このところ、TL上で市川哲也『名探偵の証明』シリーズが話題になっていた。私も一作目と二作目を読んだ時に感想を記したけれども、admiralgotoさんの第二作に関する記事を読んで、「持たざる者の戦い方」という評言に膝を打ち、しかし同時に異なることも浮…

四月に読んだもの

よしもとばなな『白河夜船』新潮文庫 ひとに勧められて十年以上ぶりに著者の小説を読んだら、太宰治のようにすーっと染み込んでくる語りで、実際四半世紀前の作品といってもニート生活に漂うバブリー感のほかは古びた感じがしない。新しいあとがきもパワーフ…

アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』

知人が某誌に「都市SF」論を書いていたので、そこで紹介されていた、SFミステリの名作として名高い本書を読んでみた。 舞台は三千年ほど進んだ未来。地球は、先住民である地球人と、かつて地球から銀河の星々へ移民し、高度な文化を発展させて逆に地球人…

『殊能将之読書日記』が刊行されるそうです

前回紹介した殊能将之氏の公式サイトを基にした本が、『殊能将之読書日記 2000-2009 The Reading Diary of Mercy Snow』というタイトルで6月11日に発売されると先週、予告が出ていました。 「katsukura」前号が刊行情報のおそらく初告知となった本書について…

矢部嵩は天才である。(5)――『〔少女庭国〕』

1 卒業式の日、女生徒たちが会場へ向かう長い廊下を歩いていると、ふいに見知らぬ部屋で一人眠っていた自分に気がつく。壁には何やら指令書のようなものが貼り付けられており、「死亡した卒業生」なる不穏な言葉が見受けられる。どうやら、自分たちはここに…

矢部嵩は天才である。(4)――『魔女の子供はやってこない』

四年ぶりの長篇 第三作『魔女の子供はやってこない』(角川ホラー文庫、2013)は、前作『保健室登校』(同、2009)からちょうど四年ぶりに刊行されました。技巧と物語が高度に洗練されたこの小説は、おそらく矢部嵩的世界の現時点での頂点を極める作品で、私…

矢部嵩は天才である。(3)――『保健室登校』

冒頭の描写から 矢部嵩的世界においては、殺人や人体損壊などの残虐かつグロテスクな行為が登場人物にアッサリ受け入れられる場面が少なくない。それを記述する場合、われわれの「日常」において「平易な文章」として通じるものとは異なる書き方が必要なのは…

三月に読んだもの

坂木司『青空の卵』(創元推理文庫) 十年ほど前から散々噂を聞いていたが、確かにキュンキュンする個所多し。ところで、各編の扉裏のポエムは良いとしても、末尾に白ページが2ページ続いたりするのは、いったいなぜなのだろう? 麻耶雄嵩『名探偵 木更津悠…