立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

最近特にここに書くことがないというか、腰を据えて読んだり書いたりしていないのですが、以下雑感です。※室井光広『わらしべ集』(深夜叢書社、2016)という本が出ています。http://shinyasosho.com/home/book1610-01/論考中心の【乾の巻】と書評中心の【坤…

サンプリング・アルバムは走馬灯の夢を見るか?――法月綸太郎『挑戦者たち』

法月綸太郎の『挑戦者たち』を読んで、僕はずいぶん懐かしい気持ちになった。十代の頃、むさぼるように読みふけった本格ミステリで接した「読者への挑戦」という文章から受けた、あの不思議な感じを思い出したからだ。 この本の形式をどう呼ぶかは難しい問題…

市川哲也『蜜柑花子の栄光 名探偵の証明』(東京創元社、2016)を読みました。鮎川賞受賞作から続くシリーズ三作目にして完結編。前二作以上に凄まじく、圧倒された……というのは、あんまりポジティブな意味ではないんですけども。 私は基本的に、この著者を…

ぼさのば

外出から帰って部屋の窓から遠い山の稜線に陽が沈むのを眺めていると、ふとジョアン・ジルベルトが聴きたくなって、それで久しぶりに、たぶん一年ぶりに、(ジョアンってまだ存命だよね……)と不安に駆られ、慌てて検索してしまった。 このところ、わたしが思…

メタミステリの怪作、連城三紀彦『ため息の時間』を読む

連城三紀彦『ため息の時間』を読んだ。 これは「すばる」に1990~1991年の約一年間連載されていたもので、連城流心理恋愛ミステリとモデル小説とメタフィクションを合体させたような作風である。著者の作品の中でも一、二位を争う怪作との評判高く、実際その…

一、二、三、そして〈遊ぶ〉ことの奥義――『殊能将之未発表短篇集』(5)

『殊能将之読書日記』を読み返していて、瀬戸川猛資の死去と殊能将之のデビューがほぼ同時期であることに思い当たった。以下、そのあたりのことをおさらいしてみる。1999年3月16日、瀬戸川猛資が肝臓ガンにより死去。「メフィスト」編集部が座談会で『ハサミ…

昨日までその気はなかったんですが以前パブーに載せたのを修正してカクヨムに投稿しました。 https://kakuyomu.jp/users/anttk というのは「矢尾通信」を久しぶりに読み返したら作中の擬似SNSシステムが懐かしく思い出され(私は大学一回の時入った近所の…

佐々木中『切り取れ、あの祈る手を』(河出書房新社、2010)を読んだ。作家の後藤明生さんが「何故小説を書くのか」と自問して「小説を読んでしまったから」と、あの独特の人を食ったような不思議な感じで答えていますね。これは、実は同じことなのですね。…

「叙述トリック」についてのメモ(6)

今更ではあるが、以下の議論に一度、目を通していただきたい。 http://togetter.com/li/295513 ここで「叙述トリック」という言葉が何を指すのかについては、その言葉について、じっくりと考えたことのある者でなければ、かなり混乱してしまうのではないだろ…

ある方に勧められて清水義範『ドン・キホーテの末裔』。著者自身を思わせる作家が、『ドン・キホーテ』をモチーフにした小説を書くというメタフィクションで、作中作の他にも講演、エッセイ、小説論などいろいろな文体で構成される。「現代においてパロディ…

カズオ・イシグロの第二作『浮世の画家』(An Artist of the Floating World、1986年/ハヤカワepi文庫)を読んだ。イシグロ作品を読んだのは『夜想曲集』以来二つ目。舞台は1948年から1950年にかけての日本。語り手は大戦中に戦意高揚絵画を描いてかなりの…

一、二、三、そして〈遊ぶ〉ことの奥義――『殊能将之未発表短篇集』(4)

(承前)夢と現実のはざまに生きる者だけが、真摯に夢を、現実を生きようとするのだ。(「空耳通信1 押井守あるいは半分は予感でしかない通信」/『Before mercy snow』所収)単なる三人称でも一人称でもない、その二つの「はざまに生きる」言葉について考え…

apogeeの新曲「RAINDROPS」が3月23日にリリースとのこと。 apogeepoint ※ 44th music(CONDOR44改め)はもう二年近く活動無いですが、何かあったんですかね。 https://twitter.com/condor44_ppp

一、二、三、そして〈遊ぶ〉ことの奥義――『殊能将之未発表短篇集』(3)

(承前) かつて『Before mercy snow 田波正原稿集』(名古屋大学SF研究会、2013)を読んだ際、私はフィリップ・K・ディック『ヴァリス』論の次の一節に目が留まった。 たったひとつの言葉が気にかかる。本は『暗闇のスキャナー』、「作者のノート」。「なに…

一、二、三、そして〈遊ぶ〉ことの奥義――『殊能将之未発表短篇集』(2)

(承前) この本を最後まで読むと、作者は生活のために、前の三編のような短篇を量産しなければならなかったのではないか、という思いが多少なりとも誰の胸にも湧くと思う(失礼な言い方をお許しあれ)。しかし、現実にはそうはしなかった。依頼を断っていた…

一、二、三、そして〈遊ぶ〉ことの奥義――『殊能将之未発表短篇集』(1)

発売のアナウンスがあった時は「短篇が執筆されていたのか?」と目を疑ったけど、『殊能将之未発表短篇集』(講談社、2016)には短篇が三つと、私小説ふう日記エッセイ一つが収められている。短篇のうち、「犬がこわい」は犬恐怖症の男とその近所に現れた巨…

詳細は不明ながらnuitoの新作が出るらしく、新しい音源が上がっている模様。 ひらう on Twitter: "そろそろなので進捗報告・宣伝用にバンド垢つくりました https://t.co/68f6PdXPDJ" https://soundcloud.com/nuito-1 ファーストが2009年だから七年ぶりの新譜…

nemanocさんの「今週のトップ5」という形式はいっすね。なんか懐かしい感じで。http://proxia.hateblo.jp/entry/2016/02/15/080644※年が明けてからもなんとなく梶龍雄作品を立て続けに読んでるんですが、さすがに驚き慣れしてきた感じ。個人的ベストは今の…

そういえば昨年秋、Earth, Wind & the FireのSeptemberを久しぶりに聴いたら、イントロから印象的なギターフレーズが流れてきて驚いた。 Earth, Wind & Fire - September というのは、このフレーズがDon CaballeroのPalm Trees in the Fecking Bahamaに引用…

「これは推理小説ではない」

これまで何度か触れたことのある話題ですが、今回はもう少し詳しくまとめておきます。 ※ 解決編で登場人物が「これは推理小説ではなく現実なのだから……」といって、平々凡々な真相を示す作品の系譜というものがあります。そのセリフによって、トリックがショ…

続・「遠いファンタシーランド」を偽物化する――『殊能将之読書日記』

(承前) 「偽物」論がピークに達するのは、次の一節ではないだろうか。 ディクスン・カーの歴史ミステリをなんとなく読んでいる。わたしは西洋史にうとく、ずっと敬遠していたから、ほとんど初読である。 まず『ビロードの悪魔』(吉田誠一訳、ハヤカワ・ミ…

殊能将之短篇集の情報が公式でも発表されました。 http://kodansha-novels.jp/ https://twitter.com/admiralgoto/status/684577660991754241 2月11日発売 『殊能将之 未発表短篇集』 著者:殊能将之 ──デビューのころ書かれた未発表の短篇三作と「ハサミ男の…

あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします。 ※ 『美濃牛』に関する以下の話題をこちらには載せてなかったので、リンクを張っておきます。 ◯もし洞戸村の人が殊能将之の『美濃牛』を読んだら。 http://www.horado.com/modules/d3forum/index…

ドラマ「赤めだか」を見ていたら、その数日前にやっていた「黒蜥蜴」に比べるとさすがに面白かった。 ※ そういえばもう十年以上前、「爆笑オンエアバトル」に時々、落語家が出ていた。たいていは予選落ちになってしまうのだが、たまにオンエアされることもあ…

殊能将之短篇集が来月2月に出るという噂があるそうです。 https://twitter.com/flow2005yob/status/678865519299063808 「キラキラコウモリ」と「ハサミ男の秘密の日記」を併せるとたぶん100枚は超える(単行本で60頁くらい?)と思うのですが、他に長いコン…

nemanocさんの新ブログが爆誕。 http://proxia.hateblo.jp/ 私もそのうちはてなブログに変えようかしら。 ※ 講談社文芸文庫の金井美恵子自選短篇集が三冊揃った。 『砂の粒 孤独な場所で』 『恋人たち 降誕祭の夜』 『エオンタ 自然の子供』 あと10月刊の磯…

先日のこと、ある人が、ぼくにこうささやいた。作家Bさんは、やはり、すごい人だと思う。「あの人、ほら。決して、えらくならないでしょう」と。 そういえば、ある傾向のものを書かせたら右に出る人がいないと思われる存在である。名前も通っている。でもBさ…

「遠いファンタシーランド」を偽物化する――『殊能将之読書日記』

『殊能将之読書日記』が発売されて5カ月近く、版元のアナウンスでは少なくとも一度は重版されたそうだから、第二弾の可能性はありうるでしょう。 以前にも書いたように、この本は旧公式サイトの「reading」という原書を読んだ感想ページだけをまとめたもの…

媒体に掲載された殊能将之情報【暫定版】

ご本人のインタビューやコラムについては「生活は質素で、作品は冗談好き」さんが詳しくまとめられていますが、私も以前、他の人物によるセンセー紹介情報を集めてみようかなと思ったことがありました。 以下、その時つくったリストが出てきたので、載せてお…

梶龍雄ルネッサンスのために――『龍神池の小さな死体』

梶龍雄『龍神池の小さな死体』(講談社、1979) 乱歩賞受賞の『透明な季節』(1977)から数えると六冊目。いわゆるスリーピング・マーダーもの。時は大学紛争の季節。主人公の大学教授・仲城は、死に際の母から「戦時中に疎開先で溺死したお前の弟は実は殺さ…