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襤褸は着ててもロックンロール

「週刊SPA!」・京都・映画

今週というかもう先週号だが、中原氏の連載映画批評で、フィルム・ノワールビッグ・コンボ』の話が出てきた。そして、映画評論家の吉田広明氏から、新著である初の単著『B級ノワール論』を贈られた、と最後に書いてある。
私はここで、アレっ、と思った。
というのは、私の大学で今、「フィルム・ノワール特集」が組まれておりそこで先週、『ビッグ・コンボ』を観たばかりだったからだ。
件の吉田氏の他にもう一人、評論家を招いて、二人に二作ずつ選んでもらった、計四作のフィルム・ノワールが上映される。評論家の講義週が二回、映画の二作上映週が二回で四週という特集。
上映される映画は、アルドリッチキッスで殺せ』、プレミンジャー『歩道の終わる場所』、ルイス『ビッグ・コンボ』、フライシャー『その女を殺せ』の四作。「評論家の両氏厳選の二作!!」とは言いつつ、実はこのうち、『その女を殺せ』以外の三作は全て、紀伊国屋書店から出た『フィルム・ノワール傑作選』に入っている。「面白いなあ、もう観れないのかな」と思いながら、携帯でamazonを調べてこれが出てきた時は、まあ、ちょっとガックリした。でも吉田氏はDVDの解説なども結構書いているというから、そのBOXに書いているのかもしれない。というかあるいは、企画段階で関わっていた可能性もある。
それはそれとして。
今回以外にも、名作上映は定期的に行われている。なぜ大学側がそういった特集の企画をたて、DVDとはいえレアな映画を上映し、評論家を呼んでいるのか? 私はそう考えた時、今年の六月に、とあるバーで聴いた話を思い出した。
(ちょうど、このブログが出来た頃……というか、よく思い出すと、まあ興味のない人には関係のない話だが、そのバーからのまさにその帰り道、私は読書企画サークル<短篇奇賊>のリーダーから、「ネットに文章書いてみない?」と持ちかけられ、それは、オフィシャルブログのこのページに何か文章を書け、という意味だったのだが、私は「自分のブログを持て」という意味だと勘違いしてこのブログを立ち上げ、今に至る)
それは京都にある「バー探偵」という場所で、映画監督の林海象氏が経営しているちょっと変わった店だ。奥には隠し扉があり、その中はホームシアターになっている。
私たちが入った際、客はいなかった。バイトの店員が、「22時くらいに監督、いらっしゃいますよ」というので、ちびちび飲みつつ待った(面識はなかったが、好奇心で)。
22時半頃彼らはやってきた。中年男性二人と、三人の学生だった。誰が監督なのかもわからないのだが、サングラスの男性は学生と話し込んでいる様子だった。私は酔った勢いで、一人で飲んでいたもう一方の男性に話しかけた。彼はR大学の教員(?)で「君たち、何学部?」と聞き、私の仲間が「国文です」と答えると、「あーあ、私も国文はまあ、専門みたいなものだよ。佐伯順子さん、って、知ってる? あと、小谷野敦さんとかにも会ったことあるし……」と言い、その頃ちょうど、小谷野氏の『恋愛の昭和史』を読んでいた私は、「えっ、本当ですかっ!?」と言ったのだったか……。あまり思い出せない。で、いい加減、長々と話してしまったところで彼は、「まあ私なんかと話してもしょうがないね、ほら、ここは監督の店だから」と、学生と話していた男性をパッと指差した(それで私たちは、ああこの人、監督じゃなかったんだ、とわかった)。指差された監督は「えっ?」と聞き返し、「それよりさあ、君、この店来るの、初めてだろ、実はこの店、隠し扉があってさ……」と、初めてきた知り合いには誰にでも紹介するのだろうホームシアターへ男性を連れて行ったので、学生に話しかけると、別の大学の映画サークル会員だという彼らは、「あ、そちらの大学、いつも名作上映されてますよね、あれ、話題なんですよ」と言った。
「話題?」「ええ。いつも良いラインナップですよね。何でも以前、広島で映画のそういう活動をされて有名だった方が、そちらの大学に移られたらしくて、それで今、映画企画のブレーンになっているとか……」「へーえ、知らなかったです」「DVD上映と言っても、TSUTAYAでレンタルしてるようなものじゃないですからね、僕たちも観てみたいんですけど、何ぶんサークルの活動日と重なっちゃって……」「それなら」、と私は、たまたま持っていた上映予定ラインナップを彼らに渡した。
そのブレーンというのは一体、誰なのだろうか。ジム・オルークや吉田氏、NDU(=日本ドキュメンタリスト・ユニオン)の元メンバーなどを招き……。
もしかしたら中原氏とも面識があるのではないだろうか? 彼は今年、京都へきた際に鴨川で荷物を盗まれたそうだが、その時にそのブレーンの方と会っていたりして……。それで、この「週刊SPA!」の文章につながったりして……。
と、長かったが、まあ、そのようなことを思ったわけです。真相やいかに。
今週は吉田氏の講演週なので、行ってみようと思います。

B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち

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