立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

一週間前、アパートを出ると目の前の電柱にポスターが貼られており、急遽、観賞決定した。
何せ、右翼を騒がせ、鈴木邦男を騒がせ、『週刊新潮』を騒がせ、インターネットニュースを騒がせ、月刊『創』に監督ご本人の反論も載ったあの『天皇伝説』(with姉妹編の『ノモンハン』)が観られるのだから……。
……というにわか仕込みの知識なので、渡辺作品は初見だった。高校時代に『ザザンボ』を観たという先輩から「普通の駄作、だと思って観たら激しく後悔するぞ……」と言われ、何せ高橋源一郎のファンで、今でもたまにネット小説やケータイ小説をチラ見する私のこと、「どれくらいガッカリしちゃうんだろうなあ、ウフフ」とウキウキして行ったのだが、意外に普通だった。
「上映中止!」「妨害がやってくる!」という東京辺りの例を思い浮かべて、たぶん、観に来た多くの人は結構、「本当にやるのかなあ〜」とドキドキしてたんじゃないかと思うが、私が観た回は特に何もなかった。
で、本題です。
まず『ノモンハン』。ポスターにはこう書かれてある。「”ノモンハン”で散った日本兵士たち数千名の命…なぜ彼らは死ななければならなかったのか?/そして、数千の犠牲を負ったにもかかわらず、なぜ突然停戦せねばならなかったのか…/その裏に隠された歪んだ軍隊内差別の矛盾を、渡辺が鋭くえぐりだす!」
次にチラシ裏の「あらすじ」。「今から七十年前、現在の中国北部に日本の傀儡(カイライ)国家『満州』があり、その隣には現モンゴルの内蒙古が、ソビエトの支配下にあった。旧日本軍は、当時の社会主義国ソビエトがどの程度の力があるのか、ウズウズしていた。ある日、ソビエトと日本の間で国境紛争が起こった。これが日本ではノモンハン事件ソビエトではハルハ河事件と称し、血みどろの戦いが繰り広げられた。近代化が遅れている旧日本軍は、ソビエトの機械化部隊にコテンハ(注・原文ママ)にやられ、夥しい死者が出た。……(以下略)」
これを読んで私は、大西巨人の『神聖喜劇』みたいな話なのか? と思ったんですが、そうではなく、話の派手な部分はかなり端折られます。「あらすじ」には一切出てきませんが、話の大部分は、ヒロインが不倫したのかどうか? がメインです。
実際に移るストーリーはこういう感じ。(って、バラしちゃいますが)ノモンハンでのリーダーで、停戦せざるをえなかった渡辺が地元に帰ってくる。「なぜお国の為に最後まで戦わなかったんだ」と、村人の中には渡辺の帰還を歓迎しない者もいる。渡辺の息子はその前に、謎の自殺を遂げていた。その原因は、息子の嫁のノブが、皇族将校と姦通していたからではないか? と村では専らの噂だ。なぜ息子は自殺せねばならなかったのか…その裏に隠された真相を、鋭くえぐりだす! という話。映画の大半は村内で展開し、最後にちょこっと戦争シーンもある。
役者の演技が、映画というより素人演劇っぽいとか、台詞を噛んでもそのまま使ってるとか、照明がやけに薄暗いとか、色々あるのだが、最後は結構ミステリーっぽくひっくり返るし、割と面白かったと思います。
天皇伝説』は……「アクション映画」というだけあって、「皇室のウソ!」と資料解説が淡々と続いた後は、秘密のVHSをめぐる長いアクションシーン。スキー場で飛んだり爆破したり、電車と併走したり、凝ってます。ラストも「こ、こうくるか」という感じ。
ただ柳下毅一郎氏のいう、『天皇伝説』の最後が「××の××」の再現、というのはわからなかった……。あまり詳しくないもんで。でも気になるなあ。
で、会場の外に出ると、映画に出演していたと思しき女の子が、劇中より少し大きくなった姿で、「はい」「どうぞ」と、来場客にチラシを手渡しているのね。癒された人も多いのではなかろうか。




あと、『ノモンハン』のヒロインの黒瀬麻美さんは、藤原紀香というより荒川静香似ではないかと思った。