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立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

3000部!

ジュンク堂新宿店の特設コーナーで福永信サイン付き『アクロバット前夜90゚』を買った。神田の三省堂本店に積んであって安心していたのがいつの間にかなくなり、寂しく思っていたもので、今のうちとばかり手に取った。
誰の字か、たぶん福永氏本人なのか、奥付の
「二○○九年六月一日 第一刷発行」
と印刷されたすぐ下に、赤ボールペンの細い字で
「3000部!」
と書かれてある。
この
「3000部!」

「!」
とは、一体何だろうか。
何を表しているのだろうか。
「3000部」
というのを見た時、「結構多いな」と思った。発行元のリトルモアは人気はあっても超大手というわけではないから、割と強気の数字ではないだろうか。
いや、でも、小説なんだから、エンターテインメントなんだから、せめて3000部くらいは売れないと辛いだろうし、部数を絞ればもっと高くなるだろう。
本体価格が1600円だから、いや、1600円というのもちょっと驚きの低価格だと思うが、3000部売り切ると480万円。
印税はかなりおおざっぱに10%としても48万円。
これは「3000部!」という数字が正しかったとしての話だが、なぜこんなことを粘着的に書いているかというと、水戸芸『WALK』日記特集の福永氏の日記を以前読んだからで、日記は家賃の支払いが厳しくなり京都から東京の実家へ氏が退避されるところから始まり、細かく出費の計算がつづられ、お金のなさに悩まされつつも作家としての自負を保つ苦しさが描かれ、なんと年間の収入までさらっと明らかにされている。
日記の最後には連載の打ち切りをめぐる編集者との会話の様子が記され、これが大変読み進めるのが辛い哀切なもので、となるともう本を買うしかない。
そこに「3000部!」という数字を見ると、「ここから得られる収入は……」
という邪推が働き……。
氏はいろいろとブラックボックスな数字を明らかにされた。
それで応援したくなってしまうのは何だか乗せられているような気もするが、内容の面白さが大前提にあるのは言うまでもない。
次に本を出されるのはいつか。