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襤褸は着ててもロックンロール

パラソルの微風――今年買った本で良かった装幀

あれ、もう12月か……。
「クリスマス・ファシズム」という言葉は、恋人のいないもてない男が半ば自虐ネタ気味につぶやくもの――という理解なのだが、そう言う男は結構敏感ではないかと思う。気にしなければまったく気にならないし。繁華街に出かけずテレビも見なければ、そうイライラするほどのものだろうか……。と最近思いました。
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『パラソルの微風』という漫画買ったんだった。全16ページ、木版漫画。表紙と検印紙は手摺りだが、本文は簡易印刷だとか(普及版)。
恩地孝四郎の本を読んで、木版画に少し興味を持ったので買ったのだが、この本のモノ感が凄かった。「えーっ、どうやって印刷してるノー!?」という気がする。ザラザラの紙に版画のカスレ具合も良い。「手間かかってます」ってなオーラがむんむんしてくる。でもサイトhttp://www.interq.or.jp/tokyo/kuroneko/ff/manga/parasol-f.htmで見てもやっぱ違うんだよなあ。
佐藤亜紀氏のtwitter見てたら「一定のところまでは、モノとしての本大好き、で行くでしょうが、ある水準を超えると、モノとしての本いらね、になります。世に言う腐海が発生するあたりでしょう。今や正直、私有する必要すらなく、必要なときに検索してダウンロードできればそれでいい、と。」「そこから先、モノとしての本の価値はひたすら骨董品化します。特に装丁の美しい本、稀覯本以外はデータでよし、と。で、コレクションとしての本は傷まないよう指も触れない、と。 」というつぶやきがあって、まー、どうでも良い本でも家にたくさんあって、結構疎ましく思ったりするよね……。でもこの木版漫画とかだと(内容はともかく)スゲー大事にしたくなる気持ちわかるわあ。本の場合、データと実物は2次元彼女と3次元彼女(?)くらい違う気がする。
装幀が良いと買って読む人が快適であると同時に、きれいだったら販売にアピールするし(ジャケ買いとか)。今年出た『激しく、速やかな死』は、カバーをめくると黒地に金文字が美しい表紙で、「1300円の割にゴーカな!」という感じがした。『鏡の影』講談社文庫版は、「この文字はっ!?」と思って奥付を見ると、みすず書房などでおなじみの精興社が印刷であった。文庫で精興社という本はあまり知らない。
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でも今年一番、装幀で「ピコーン!」と来たのは、堀江敏幸の『正弦曲線』で、これは間村俊一装幀に装画が恩地孝四郎。このトライアングルは、狭いストライク・ゾーンに剛速球! という感じ。平台にあったこれのサイン本が最後の一冊で、見つけた瞬間にパッと手に取って、レジに向かってしまった。
200頁弱の本だが箱入りで、本体はソフトカバー。いま手元にないから何だけど、たぶん仮フランス装だったかな。まあ内容は「堀江敏幸ですねえー」という感じの短いエッセイ集で、正直あまり覚えていないのだが、読んでめくって楽しい。ネットだとわかりづらいけど、箱の表面が型押しで、「渋っ」と思った。
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ちなみに、私の持っている『パラソルの微風』普及版はオビ裏の推薦コメントがホラー作家の福澤徹三で、店頭で手にとって「なぜ!?」と思ったのも買った理由なのだった。

正弦曲線

正弦曲線