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立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

アリバイづくり

ミステリ

更新の穴埋めに、ちょうど2年ほどまえに、読書コミュニティサイト「たなぞう」に2つだけ書いた感想を少し修正して上げておく。

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名探偵モンク モンク、消防署に行く (ソフトバンク文庫NV)
《米の人気推理ドラマのノベライズ第一作。ドラマの脚本家(推理作家でもあるらしい)による小説オリジナル作品だ。

 ストーリーはこうだ。
 自宅のシロアリ駆除作業のため助手であるナタリーの家に泊まることになったモンクは、ナタリーの娘ジュリーから「スパーキーを殺した犯人を捜して」と依頼される。
 スパーキーは、消防署で飼われていた犬。殺された晩、町では火事があり、消防士たちはみな出動していた。火事現場には住人のエスターばあさんの死体が。警察の調べで煙草の不始末による事故死とされたエスターばあさんだが、モンクは彼女の死を殺人だと看破する。
 ばあさんは近隣の嫌われ者で、地域の開発計画にも唯一、反対していた。事件を捜査するうちモンクは、開発計画の主導者ブリーンが、火事とスパーキー殺害事件の共通の犯人だとにらむ。

 ドラマは見たことがなかったが、とても楽しめた。
 妻を殺されて以来、潔癖症強迫神経症などの神経症を発症している奇人変人キャラの主人公モンクと、語り手である助手ナタリーをはじめとする周囲の人物達とのかけあいが楽しい。
 他人と握手する度にウェットティッシュで手を洗浄し、食べ物もいちいち長さや形状を計り、と、作中何度も繰り出されるモンクの奇行には笑わずにはいられない。その涙ぐましい努力は往々にして子供っぽいのだが、時には感動的な印象すら与える。特に、自分が出したゴミは「きれいなゴミ」なのだから、他の不潔なゴミとは分別されているはずだ、と(子供がサンタクロースを信じるように)信じる彼が、ゴミ処理場で真実を目にしてショックを受けるものの事件のために奮闘し、願いを叶えるエピソードはちょっと泣ける。
 
 彼の奇行の裏には、過去に「妻が殺された」というセンチメンタルな事情がある。モンクにとっては、自分の行動と事件の解決はともに「秩序の回復」という点で同じなのだ。
「人生では、あらゆることがつながっている。だから、合っていないものが見つかるんだ」という彼の台詞は、根幹に関わるものだろう。鋭い観察力を持つゆえんである。
 そしてくどいほどの笑いの中に事件解決の伏線があるのだから、侮れない。犯人指摘のプロセスなどはややゆるいが、楽しめる。
 ナタリーの元気な一人称もいい。夫を亡くした一児の若い母親としての意見や、モンクを操ってはまた翻弄される姿の、なんと生き生きとしたこと。
 すっかりファンになってしまった。》
(と、いいながら、一年後にノベライズ第二弾が出ているのだが、未読である)

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●オールド・ファッション 普通の会話―東京スーテションホテルにて (中公文庫)
《題名通り、大学教師にして文学者である二人が東京ステーションホテルを舞台に、昭和六〇年(1985)四月八日の夕方から九日の昼にかけて交わした対談を基にした一冊だ。
 食堂やグリル、あるいは部屋の中でブランデーを飲みながら、学生への教育方法、アメリカやフランスなど滞在先で感じたこと、著作について、映画について……など、様々な話題が繰り広げられる。一方、ホテルの窓から見える電車を待つ人々や発車の音、ホテルで行われているらしいパーティーに出席する人々など、対談中に気づいたことについても話が脱線していく様子が面白い。
 今やこの本の対談から二十三年。舞台となった東京ステーションホテルは工事のため平成二十三年まで休業。江藤淳は亡くなり、蓮實重彦は東大総長を経てなお精力的。
 だから二人の会話の中には、現在ではより興味深さの増した話もたくさんある。
 例えば、昔は京都にもステーションホテルがあったとか、江藤淳が自分の批評を語って、「……つまんないことだけど、それは生きている感触でね、こんなだったら、もうあと三十年くらいやるかって。(笑)」と言ったり(江藤淳の自殺はこの対談から十三年後、平成十一年のことだ)、蓮實重彦が本当はアメリカ映画も好きなのに、フランス映画至上主義と思われて困る、と語ったり。
 特に、二人が「女性性」について論じた後、評論家であり小説も書いた中村光夫について、
江藤「あの人は、小説が書きたくてしようがない人ですよ。」
蓮實「変にエロですよねェー。存在そのものがエロって感じですね。」
江藤「そうそう、エロです。あの人はエロそのものですよ。」
と同意するくだりは笑ってしまう。
 文庫版の渡部直己と絓秀実による「対話による解説」はまた違った趣きだ。本編の二人が(あえて?)話題にしなかった、または「東京ステーションホテルにてスーツを着ての対談」という行為が持つ「優雅さ」とは真逆の、「貧困」をテーマにして話が広がる。》
(東京駅の改修っていまどうなってるんだっけ)
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その年の年末に読書メーターに移行したが、特に進んでいない。
名探偵モンク モンク、消防署に行く (ソフトバンク文庫NV)
オールド・ファッション 普通の会話―東京スーテションホテルにて (中公文庫)