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立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

あれこれ

雑談

風邪でちょっとペースダウンしていたものの、ぼちぼち気になった事柄のメモを復調していきたい。
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後藤明生電子書籍版選集がスタート。すでに『挾み撃ち』と『吉野太夫』が配信されている。
企画全体の予定は次のblogにある通りらしい。私は紙のほうが好きだが、ほとんどの後藤作品が絶版である現在、手軽に読むことができるのはありがたい。私は後藤明生からかなり影響を受けた。今後も受けるだろう。
たまたまなのか、いとうせいこう(過去に「文芸漫談」で「二代目後藤明生」を自称襲名した)も「すばる」2013年12月号でトリビュート短篇「鼻に挟み撃ち」を発表している。これから読みたい。
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パスカルキニャール『秘められた生』が明日(11月14日)刊行。水声社のblogで来日イベントとともに(やっと)紹介されている。新作は原著発表が1998年ということだが、520頁/定価4800円というのは、過去の邦訳で最大の大著だろう。
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岡和田晃『「世界内戦」とわずかな希望〜伊藤計劃・SF・現代文学』がアトリエサードより刊行。ソフトカバー320ページで本体2800円と高めだが、同時代的な文芸評論の刊行自体が、今や少なくなっている。氏の活躍は貴重だと思う。
と同時に、私は、SFに疎いため、よく取り沙汰される「伊藤計劃以後」という言葉がよくわかっていない(最近一部で話題になった旭秋隆氏の野崎まど『know』評もピンと来なかった――というより同評は、論理展開がわかりづらいうえに、言葉の混乱があると思う。四回ほど読み返してしまった)。「SFマガジン」の追悼特集や「以後」特集を取り寄せたので、併せて読みたい。
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大澤信亮氏が来月12月から1月にかけて、日本映画大学五人をゲストに連続対談を行うという。どれも気になるが、強いて挙げれば12月7日(土)東浩紀の回、12月14日(土)、12月21日(土)杉田俊介の回、1月11日(土)山城むつみの回だろうか。
東氏に関しては、もう三年近く前、「復活の批評」発表時にネット上で話題になった。杉下氏は『ロスジェネ』最終号でロング対談を行なっている。山城氏に関しては、二人とも今年、『新世紀神曲』、『連続する問題』と、同時代批評の著作を発表し、お互いに書評を書いているが(『神曲』『連続』)、両者とも結論は「(この本には)他者がいない」ということを述べ合っていた。私はどちらの本も読んだけれど、いったいどういうことなのか。
この対談シリーズは少なからず、話題になるだろう。
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最近TLでよく見かける、「子午線」第二号東京堂書店で入手。さっそく、大杉重男インタビュー「文芸批評は不可能であり、不可避である」を読む。面白い。
もともとこういうインタビュー記事は大好きだ。聞き手の同誌同人・長濱一眞氏(1983年生)、綿野恵太氏(1988年生)は、私とほぼ同世代だと思うが、大杉氏の著作を読み込んだうえでのインタビューなので、読み応えがある。大杉氏も非常に率直。たとえば先の大澤氏についていえば、〈大澤信亮は今は文芸誌に出ているみたいですが、ああいう「更生」の仕方は良くないですね。薄い人生論を深刻そうに語るだけでは、福田(和也)と鎌田(哲哉)の悪いところだけ受け継いたようなものです。大澤さんも小説家志望だったので、批評にもそれが出ていて、ああいうやたら感激的で「誠実さ」だけが売りの「大正」的な文学青年的文章は、現在の文壇にはぴったりの人なんでしょうが〉。山城氏については、〈山城さんは深刻ぶる必要のないところで深刻がっていないか、そのことがNAMについての沈黙になり、山城さんの批評の死角になっているのではないか〉〈論理的に割り切れないものに突き当たって、そこで命がけの飛躍のようなものをするというのが、初期の山城さんの批評のスタイルだったとも思いますが、最近の山城さんは、論理的に甘くなって、安易に飛ぶようになっているのではないか〉というような箇所は、印象に残る。
先の岡和田晃氏も「政治性」についてよく発言されているが、私も、「政治性」については、キーワードとして気になり続けている。だから、大杉氏がインタビューの最後で〈政治的なものはこちらの都合は関係なしに言葉を通してテクスト分析にも関わってくる〉〈文芸批評と政治とは、本当は根本的に相容れない所があると思います。政治の言葉は最終的に偽善的にならなければならないのに対して、文芸批評はその政治の言葉がはらむ偽善に敏感にならざるをえず、露悪的にもならざるをえない〉〈少なくとも文芸批評と政治的実践は区別されるべきだと思います。というか区別し続けることそのものが文芸批評なのかもしれない〉と述べられているのには、線を引いた。
まあこんな切り貼りではよくわからないだろうから、詳細が気になる方は是非、入手のうえ全文に当たっていただきたい。安里ミゲルインタビュー、絓秀実論考(「来春航思社より評論集を刊行予定」とある)も興味ふかい。