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襤褸は着ててもロックンロール

瀬川コウ『謎解き乙女と奪われた青春』
ドラマが主体の感じでミステリとしてのトリックはそれほど大きくなく、また私はスクールカースト云々というような話はニガテだけども、二人が決別してからはドライブがかかり、読み切ってしまった。ところで中学時代に探偵役としての才能を発揮したキャラクターがある失敗から高校では目立たないようにする……という話はけっこうありますが、自分が中学生だった頃を思い出すと、そんなクールなことができるとはなかなか思えないんですが皆さん本当にそんなにかっこいいんでしょうか。

ところで謎解きというのはある意味で、失われた過去を取り戻そうとする行動だといえる。それは、「現在」から遡って「あっただろう過去」を探し、「あり得たかもしれない過去」まで希求する。だから過ぎ去るものとしての「青春」を題材にする「青春ミステリ」は、謎解きという行動とは相性がよく、すでに「青春」でない人間までもが「存在しなかった青春」を求めて心痛めるのは不思議なことではない……むしろ「存在しなかったもの」を求めて心痛めるためにこそそもそも書かれ、読まれるのではないか。