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襤褸は着ててもロックンロール

ミステリ

つらつらと10:「驚きの減衰」について

エラリー・クイーンの長篇を読みながら。>と書いてから四ヶ月、まだまだ全くクイーンについて書けそうにない。 というわけで、また別の話題にしよう。 今日たまたま、荻原魚雷氏のブログ文壇高円寺の最新エントリと、雑誌「メフィスト」最新号に掲載された殊…

つらつらと9:続々・「ロジック」を読むことについて――『離れた家 山沢晴雄傑作集』を読む

【『離れた家 山沢晴雄傑作集』収録作品の真相について若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) だんだん自分の手に負えなくなってきた気もするが、まとめてみよう。 しかし、前回の「複雑さ」という言い方も大雑把だ。私はそれが、どの…

つらつらと8:続・「ロジック」を読むことについて

久々にこの話題に戻ってみた。 ミステリの「ロジック」の周辺について、いわゆる「後期クイーン問題」などとは別の面から考えてみたいと、個人的に思っている。 ミステリの「ロジック」は、ミステリファンのあいだでも、一種のリトマス試験紙のようになって…

続々・自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※松尾詩朗『彼は残業だったので』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) ・幻想ミステリとして読む 前回紹介した「著者の言葉」に「幻想的な謎」という語があるけれど、ほとんどのミステリはある程度、幻想性を含んでいる。…

続・自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※松尾詩朗『彼は残業だったので』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) 引用が続いたついでに、もうひとつ引いておこう。 これは後藤明生が小説論のなかに書いていた言葉ですが、「読んだから書いた」というのが、小説家と…

自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】「ロジック」について書きます、と宣言したきりになってしまっているけれど、なかなか進まない(おお、また一か月が過ぎた)。その間に、松尾詩朗『…

挑戦とバカミス――倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』について

恥ずかしい。前回のエントリのことだ。返す返すも未熟な感じがする。しかし今更消去するのも変だし、先に進まないような気もするから、とりあえず残しておこう。 今日は少しいつもの流れを止めて、最近読んだ作品について、思ったことを少し。 ※ 【※倉阪鬼一…

つらつらと7:「ロジック」を読むことについて

「次回はたぶん、ヴァン・ダインの話です。」 などと思わせぶりなことを書いたけれど、やっぱりそれは準備が整ってからにしようかと思う。で、長くなるかもしれないが、今度はミステリの「ロジック」を読むことについて、つらつらと書きながら自分なりに考え…

つらつらと6:ネタバレについて

また一か月以上空いてしまった。 このところミステリ論や詩論を集めていて、その中で買っていた『ミステリの詩学』という本(鈴木幸夫訳編、研究社、1976)に、まさに前回挙げたウィラード・ハンチントン・ライト(=S.S.ヴァン・ダイン)による「傑作探偵小…

つらつらと3:最小のミステリ

昨日、学生時代の先輩に会ったら、「あれたまに見てるよ、ほら、えーと、何だっけ、立ち読み……」と言われた。 現金なもので、少し嬉しかった。 だから、ええいっと更新してしまおう。 ※ 柄にもなく最近のエントリで(続く)等としているのは、これまでにもブ…

ミステリについて、つらつらと

北村薫のエッセイ『ミステリは万華鏡』(角川文庫版、2010)を読んだ。 面白かった。 ミステリについて、非常に根源的な書だと思った。 ※ 最近、ミステリについてつらつらと考えることが多い。 といっても、実作を読むのは以前に比べ少なくなった。この半年…

論創海外ミステリはいま

フーダニット翻訳倶楽部による5年前の横井司インタビューをたまたま見かけたので、興味深く読んだ。 http://www.litrans.net/whodunit/int/ronso.htm あの頃の論創海外ミステリの勢いは凄かった。「大丈夫かこの出版社」というミステリファンの悲鳴のような…

アリバイづくり

更新の穴埋めに、ちょうど2年ほどまえに、読書コミュニティサイト「たなぞう」に2つだけ書いた感想を少し修正して上げておく。 ※●名探偵モンク モンク、消防署に行く (ソフトバンク文庫NV) 《米の人気推理ドラマのノベライズ第一作。ドラマの脚本家(推理作…

あけましておめでとうございます

今年は去年の5倍くらい汗して頑張りたいと思います。 ※新年一冊目は『ダブル・ジョーカー』。前作『ジョーカー・ゲーム』を読んだ後、このシリーズは柳氏が作家生命を賭けて書いたと聞いて俄然興味が湧いたものの、去年のうちに読めなかったものだ。全5編の…

なんでこんなに。――『追想五断章』

『ダ・ヴィンチ』最新号で「今月の絶対はずさない!プラチナ本」に認定されてされていたので、「そういえば読んだんだった」と思い出しました。寂しい小説だなあ。 いつにもまして、今回は特にそう感じました。全体で240ページ足らずと短く、さらっと読まさ…

解体と気晴らし

綺譚集 (創元推理文庫)作者: 津原泰水出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/12メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 25回この商品を含むブログ (26件) を見る津原泰水の文庫になった『綺譚集』をパラパラめくってたら、最初の「天使解体」はどうもどこかで…

鳥飼否宇氏の最新短篇「問題作」が『ジャーロ』に載っている。 『ミステリマガジン』に載ったシリーズ前作「処女作」の感想は9月25日のエントリーに書いたのだが、今作はまた凝っている。事件を起こしつつある犯人の青年の一人称小説の下に、「神の視点から…

連城さんは……

『国文学 解釈と鑑賞』2月号http://www.shibundo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=037170209は、「現代作家と宗教 仏教編」特集なのだが、その中で、私は、直木賞作家の連城三紀彦氏が、1987年に得度していたことを初めて知った。 ウィキペディアにも載っていな…

あれ、もう三部作完結……

矢口敦子氏の早見江堂名義の本格ミステリ三部作の第3作が、前作から二か月で出ているのでビックリ。 ライトノベルではないのだから、早すぎる気もする……。これではつくファンもつかないのでは。 taipeimonochrome氏の「早見江堂=講談社への復讐説」もにわか…

氷川透さんの復活を望む

久しぶりに、会話で氷川透さんのお名前をお聞きしました。 氷川さんのホームページhttp://homepage3.nifty.com/toru_hikawa/は、高校生の頃から拝見しておりました。サッカーの話題はよくされていましたし、掲示板でのファンとの交流が活発な時期もございま…

知り合いの動画

知り合いの先輩が作った動画。 新本格ミステリブームの元祖となった綾辻行人の顔写真ばっかりを集めた動画。「俺は真の綾辻ファンであるからして、」という先輩の言葉に驚いた。えっ、先輩、そんなに綾辻好きだったんスか!? http://www.nicovideo.jp/watch/n…

『完全恋愛』

遅ればせながら牧薩次の『完全恋愛』を読んだ。 「完全恋愛」の部分はモロバレだったのだが、最後の「朋音!」に大笑いし、ううっ、やっぱり泣かされてしまうんである。 ミステリ部分は、うーん、第一と第二の殺人は良いとしても、第三はちょっとアンフェア…

『トスカの接吻』

深水黎一郎の新刊『トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ』を読む。 前作の『エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ』は未読だが、前作から始まったシリーズの二冊目らしい。本格ミステリらしい、不可能状況のあらためも確かだし、文章も読み…

十三の呪 死相学探偵1

三津田信三先生の最新刊は角川ホラー文庫から。初めてキャラクターものに挑戦したという。主人公は弦矢俊一郎20歳。日本全国にその名を轟かす霊能力者である祖母の力を受け継いだのか、幼い頃から人の「死相」が見える。小学生の時に友人と怪異に襲われて以…