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襤褸は着ててもロックンロール

『完全恋愛』

遅ればせながら牧薩次の『完全恋愛』を読んだ。
「完全恋愛」の部分はモロバレだったのだが、最後の「朋音!」に大笑いし、ううっ、やっぱり泣かされてしまうんである。
ミステリ部分は、うーん、第一と第二の殺人は良いとしても、第三はちょっとアンフェア? いや、そんなに気にならないですケド。
これは年末のランキングにくるんじゃないかな〜。
ストーリーは、主人公の本庄究の生涯を追った話。空襲で福島の親戚に引き取られた少年時代、そこで出会った絵画の巨匠に弟子入りして、日本の美術界で存在感を強めていく青年・壮年時代、そして自分も弟子をとって、ひっそりと暮らす老年時代……。
少年時代に出会った巨匠の娘に惚れて、彼女がイヤな御曹司と結婚しても「きっといつかは……」と誓い、その間に会社同士の戦いがあったり、美術界の戦争責任を問うてつまはじきにあったり、殺人事件が起こったりする。
戦後の65年間を描いたかなり長い話で、美点はいくつもあるのだが、特に第一章が好きかな。辻真先の本はほとんど読んだことがないのだが、ゴールデン街に集まるテレビマンや若者など(美術雑誌の編集者が良い)、時代的なところを書いている部分もすばらしい筆致だ。もっと読んでみようかな。『アジア号』とか『沖縄軽便鉄道』とか。


どうでもいいけど、ネモト トモネ ってのは回文名ですね。

完全恋愛

完全恋愛