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襤褸は着ててもロックンロール

『柔らかい土をふんで、』文庫化

金井美恵子の『柔らかい土をふんで、』が文庫化された。巻末に『新潮』編集長の矢野によるインタビューが載っている。
去年でた『昔のミセス』の「あとがき」では健康問題が心配されたので、皮肉で意地悪な調子も戻って、お元気そうで何より。
『新潮』2008年12月号の榊氏のエッセイとか、『日本語が亡びるとき』とか、最近の話題も出ている(そんなに触れられないけど)。
 ※
ところで、私は『柔らかい土をふんで、』という小説は、いまいちよくわからない。整合性をつける小説ではないのだろうな、とは思うのだが……。同じ金井ファンとは言っても私は、やっぱ『文章教室』は最高だぜ、とか思ってる方で、いわゆる「芸術短篇」はよくわからない。
『柔らかい土をふんで、』は、なんかデビッド・リンチっぽいなという気はする。それも『マルホランド・ドライブ』とかではなく、『インランド・エンパイア』の方。
いま、自分が観ている(読んでいる)このシーンが、何を意味し、全体の中でどういう位置を占めるのか? それがわからない不安定さ。
巻末インタビューでは、刊行当時のインタビューで渡部直己氏が本書に呈したという「一つの述語を複数の主語が奪い合う」という言葉が否定され、「分裂」という語が出てくる。
とは言ってもまあ、好きなんですけどね。
これを読んでまた『インランド・エンパイア』観ても面白いかも。

柔らかい土をふんで、 (河出文庫)

柔らかい土をふんで、 (河出文庫)