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襤褸は着ててもロックンロール

沢村浩輔『夜の床屋』(創元推理文庫。文庫化にあたって『インディアン・サマー騒動記』から改題)
ミステリーズ!新人賞受賞の表題作を冒頭に、前年に最終候補となった「『眠り姫』を売る男」を終盤に配置してそのあいだを書き継ぎ連作化したもの。確かに『眠り姫』はミステリというよりファンタジーの方が勝っていて、まだ「日常の謎」といえる冒頭からこんなふうに話が次第に飛躍していくとは、本の佇まいからはまったく想像できない。全体的に文章がうまくて読みやすいなあ、と思うものの、ところどころ不自然に感じるところがあって、たとえば第三話「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」では、主人公が小学生から奇妙な依頼を受けて人探しをするのだけど、追い詰められたその人物(もしも小学生の話が本当なら怪異的存在だが明らかに胡散くさい)が急に出てきた時に何のためらいもなく一人称地の文で「ドッペルゲンガー」と語り手が呼ぶ個所はギョッとする。こういう唐突さはふつうリアリティがないために興醒めしてしまいかねないものだけど、読み終えるとファンタジックなフワフワした感じと相まって、不思議に全体と調和しているような気もする。

その後で、羊毛亭さんとこの「〈連鎖式〉――作品リストとささやかな考察」を読んでました。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/text/rensa.html
たぶん私が初めてこの形式のものを読んだのは、中学生の時の黒崎緑『しゃべくり探偵』じゃないかなあ。あんまり意識もしていなかった気がする。