TBCN

襤褸は着ててもロックンロール

2013-01-01から1年間の記事一覧

殊能将之を再読する/『美濃牛』(1)

【殊能将之『美濃牛』の展開について触れていますので、未読の方はご注意ください】 第二作『美濃牛』をどう受け止めていいのか、迷う人も多いようだ。かくいう私もその一人で、横溝正史へのオマージュにしてシリーズ探偵石動戯作の初登場作品である、作者の…

発言紹介いくつか

殊能将之作品のひとり再読企画でいまいろいろと読んでいるんだけど、第二作『美濃牛』は実は一番ピンと来ない作品なので、どう読んだらいいんだろう、と迷っているところ。最も根本的な部分である「なぜ、いま(刊行は2000年)横溝正史なのか?」というとこ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(4)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 対話とズレ 殺人というのは存在を非存在へと変質させる絶対的な暴力で、どうしてかはわからないが、「わたし」はそうした暴力を振るわずにいられない。先述の「ユリイカ」(1999年12月号)のインタ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(3)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 ※ SCISSOR MAN and OUR MUSIC 先日、たまたま山城むつみ『ドストエフスキー』という本を読んでいたら、ゴダールの映画『アワーミュージック』についての記述に出くわした。それは、映画内でも重要な…

矢尾通信

http://p.booklog.jp/users/kkkbest 一年ほど前から「矢尾通信」という短篇を作ろうとグズグズいじっていたものの、どうもうまくいかないのでとりあえず公開することにしてみました。 2万字くらいあります。 もし読んでいただけたら幸いです。

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(2)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 ※ SNIP and SHOT さて約束のハサミ。昨年、後藤明生の『挾み撃ち』(1973、現在は講談社文芸文庫)という作品を再読した際、「これは何か『ハサミ男』に通じるものがあるのではないか」と漠然と感じ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(1)

殊能将之氏が亡くなられたという。 2013年2月11日。49歳。現存する作家の中では最も敬愛する一人だった。 このブログでは以前、『鏡の中は日曜日』と『子どもの王様』について読み返した感想を書いたことがあるが、訃報を聞いて久しぶりに『ハサミ男』から再…

a day in the life of mercy snow

ミステリ作家の殊能将之氏が亡くなられたということで、旧作を再読しつつ、現在は失われた公式サイト「a day in the life of mercy snow」の記述を振り返っている。 去年の夏、so-netからは削除されたが、インターネット・アーカイブで旧アドレスを入力すれ…

続・米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』を読んだ

前回に続き、作品についてネタバレしていますので、未読の方はご注意ください。 恋愛について 作中、「強姦魔」と比較して語られる存在がある。名探偵だ。「論理」を語る者としての「名探偵」の存在の限界や疑問はこれまで、ある時は告発的に、ある時は滑稽…

米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』を読んだ

「一昔前のメフィスト賞系を思わせるトンデモミステリ」とここのところ一部で話題になっていたので、米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』(HJ文庫、2013)を読んだ。 いわゆる「ライ…

【記録シリーズ12】鳥目

前回のジャック・イベールの話を再読した後、しばらくして「鳥といわゆる鳥目とはいったいどういう関係になっているのだろう?」という疑問がふと湧いた。鳥目の“鳥”はニワトリのことを指すのだろうが、夜行性の鳥なら沢山いる。ナイチンゲールもおそらくそ…

【記録シリーズ11】鳥

ロラン=マニュエル おっしゃるとおり。わたしはただナイティンゲールの歌はわれわれの音階の音程の中に正確にかき込めないと言いたかったのです。ナイティンゲールにしてみれば、自分の言葉は、空気のごとく、自由なのですね。だが、われわれの音楽はひとつ…

【記録シリーズ10】密室

「レゴブロック的走り書き」のシリーズは途中で飽きてきたので、やめにします。 ※ ある男が評伝作者に問いかける。「あなたの書いた亡命作曲家についてのあの本をこの前読み返したんですが、一つ重大なことに気がつきました。肝心の、作曲家がどのようにして…