TBCN

襤褸は着ててもロックンロール

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

今年読んで印象に残ったもの

印象に残ったものをだいたい読んだ順に。 山城むつみ「ベンヤミン再読」室井光広『零の力』さそうあきら『バリ島物語』1加藤典洋『増補 日本人の自画像』岩波現代文庫多島斗志之『黒百合』創元推理文庫國分功一郎『中動態の世界』金井美恵子『カストロの尻』…

俺はANATAだ

文学フリマで買った『幻影復興』という清涼院流水特集をした同人誌のオマケ冊子を読んでいたら、とても懐かしい気持ちになった。 東京流通センター――通称TRCの第2展示場、エスカレーターで2階に来たあなたは、チラシ置き場の脇を通り、数多くテーブルが…

藍川陸里さんの『探偵はその手を汚さない』(アミラーゼ、2017。私家版)を読みました。 これは北大推理小説研究会所属の方(来年卒業だとか)が今年書かれた(そして11月23日の文学フリマで頒布された)、黒岩涙香以来現在までの日本のミステリの歴史をたど…

クリスマスイブに『加藤郁乎俳句集成』(沖積舎、2000)をなぜかぶっ続けで読んでたらヘトヘトになってしまいました。 『立ち読み会会報誌』第一号改訂再版の追加内容は全部完成したので、あとは周辺情報が固まりしだいここに書きます。

ジェルジ・リゲティの『グラン・マカーブル』

ジェルジ・リゲティのオペラ『グラン・マカーブル』は、『黒い仏』を再読する上では欠かせない作品であるが、日本語で読めるものとしてはたぶん以下の資料が詳しいのじゃないかと思う。 * 全編のテクスト(日英対訳)としては、巻末文献にも挙げられている…

そういえばピエール・ド・マンディアルグの短篇『満潮』は私はアルフォンス・イノウエの挿画が入っている奢灞都館の普及版(正方形くらいのかたちのうすい仮フランス装のもの)で読んだんですが、これは若い男が少女を騙くらかしてひと気のない海辺に連れて…

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』

ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(安藤元雄訳、白水uブックス、1989)。上京した夜に初めて買った本だから、九年近く前か。裏の見返しに「500円」というシールが貼ってあるが、この古書店ももうない。グラック28歳のデビュー作で、1938年刊。は…

このミステリ評論が読みたい!

今、こういうミステリ評論があったら読みたい。 ◯社会派推理小説入門:「社会派」の定義、語源、発展と衰亡ないし拡散までの歴史とブックガイド。必然的に「本格冬の時代」についても扱う。 ◯叙述トリック入門:「叙述トリック」の定義、語源、発展と衰亡な…

il miglior fabbro

「私にまさる妙手」は寿岳文章訳の『神曲』だよ、と昨日教えていただいたので、ついでに調べてみました。 「il miglior fabbro」とはダンテ『神曲』煉獄編第26歌(117行目)の語句だが、これはどういう意味か。作中でダンテが自身よりおよそ一世紀前に活躍し…

「『私にまさる妙手』に敬意を込めて」について、

そういえば、なぜいきなりエリオットの『荒地』の話題をしたのか、このブログには書いていなかったので、わかりづらかったかもしれない。 というのは、『立ち読み会会報誌』第一号を加筆修正するために調べ物をするうち、私は積年の謎、すなわち『美濃牛』冒…

中村光夫『藝術の幻』

蔵書整理のために本棚をいじっていたら以前集めた中村光夫の本がいくつか出てきた。中村光夫という人の著作は私は金井美恵子のエッセイから入ったのだが、これまでは読んでも意識が言葉の表面をつるつると滑ってゆく感じで、なかなかとっかかりを見つけるこ…

ローレンス・スーチン編『フィリップ・K・ディックのすべて』

フィリップ・K・ディック著/ローレンス・スーチン編『フィリップ・K・ディックのすべて ノンフィクション集成』(飯田隆昭訳、ジャストシステム、1996)を読んだ。微妙なタイトルだが原題はThe Shifting Realities of Philip K. Dick: Selected Literary an…

たとえばポップミュージックにおいて、日本語だとこなれない表現も英語だとストレートにいえる、という事態がある。仮に「ラブアンドピース」という語を思い浮かべてみる。なぜ「愛と平和」だと(なんか違う)ということになってしまうのか。なぜアルファベ…

アーサー・シモンズ『完訳 象徴主義の文学運動』

T・S・エリオット『荒地』からの流れで、アーサー・シモンズ『完訳 象徴主義の文学運動』The Symbolist Movement in Literature(山形和美訳、平凡社ライブラリー、2006)を読んだ。エリオットは学生時代、この本でジュール・ラフォルグを知ったことから重要…

『立ち読み会会報誌』第一号についてのその後の情報

文学フリマでの販売以来、おかげさまで好評いただいております。 お読みくださった皆様、ありがとうございます。 本日、文学フリマ東京で入手した本で、一番、面白かったのはやはり孔田多紀『立ち読み会会報誌第1号 特集:殊能将之(その1)』です。インタ…

梶龍雄『浅間山麓殺人推理』

梶龍雄『浅間山麓殺人推理』(徳間文庫、1988/『殺人への勧誘』光風社ノベルス〉、1984の改題)読み終わり。これはいつもとは趣向が変わっていて、枠物語ふうになっている。冒頭、浅間の山荘に集められた男女五人がいきなり銃で狙撃される。彼らはみな、殺…