TBCN

襤褸は着ててもロックンロール

2014-01-01から1年間の記事一覧

殊能将之を再読する/「鏡の中は日曜日」(3)

【殊能将之『鏡の中は日曜日』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 作品がリレーするもの 私は前回、「『鏡の中は日曜日』は本格なのか否か」という疑問を書きだしたまま、言いっぱなしにしてしまった。三年前http://d.hatena.ne.jp/kkkbe…

adebisi shankの解散

数ヶ月前、adebisi shankというバンドの三作目に触れてこんなことをhttp://d.hatena.ne.jp/kkkbest/20140825/1408968501書きましたが、その翌月には解散を発表していたhttp://adebisishank.tumblr.com/post/98347497488/turning-the-lights-offということを…

十一月に読んだもの

周木律『伽藍堂の殺人』(講談社ノベルス) 結局このシリーズは、強引に続行が決まった二作目以外は、いろいろ不自然に感じるところを括弧に入れれば、なかなか楽しめるのではないかと思い始めてきました。 早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』(講談社ノベルス) 四…

殊能将之を再読する/「鏡の中は日曜日」(2)

【殊能将之『鏡の中は日曜日』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】偶然の一致について 本書の惹句としてノベルス版と文庫版のカバー裏にはそれぞれこうある。 ノベルス版:隙なく完璧な本格ミステリ! 文庫版:まさに完璧な本格ミステリ。…

十月に読んだもの

野崎まど『舞面真面とお面の女』『小説家の作り方』『パーフェクトフレンド』(メディアワークス文庫) だんだん面白くなっていく感じで、特に『パーフェクトフレンド』は傑作だと思いました。 小島信夫『小説の楽しみ』『書簡小説論』『演劇の一場面』(水…

殊能将之を再読する/『鏡の中は日曜日』(1)

【殊能将之『鏡の中は日曜日』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 『鏡の中は日曜日』については、三年前の夏にも再読した。その少し前から、自分の中では「詩と散文」への関心が大きくなっていたから、だいたいそれに引きつけて読んだよ…

そろそろ『鏡の中は日曜日』を再読したいと思います。

前回http://d.hatena.ne.jp/kkkbest/20140715/1405441087からまたしてもだいぶ時間が経ってしまいました。その間に夏があり、ラヴクラフトやツェランやマラルメやをシッカリ読もうとしていたのですが、ままなりませんでした。特にラヴクラフトについてはまっ…

浦賀和宏『姫君よ、殺戮の海を渡れ』を読んだ

浦賀和宏『姫君よ、殺戮の海を渡れ』(幻冬社文庫)を読んだ。このところ同文庫で続いていたフリーライターのシリーズとは別物で、いちおう単独作になるのだろうけど、安藤シリーズを先に読んでおくとより楽しめる。ふつうの意味で「大傑作!」とはいいがた…

【記録シリーズ20】「昔々、あるところで、……」

「昔々、あるところで、……」と始まる話を初めて聞かされたのはいったいいつのことか、誰に、どんな内容を語られたのか、いい加減忘れてしまったのですが、いや、もともと記憶に残るものでもなかったのかもしれませんが、そんな寝物語をしてもらうこともすっ…

【記録シリーズ19】ある本

パスカル・キニャール『音楽への憎しみ』にはアウシュビッツで用いられた音楽の記述があるが、以前そのあたりのことを調べていた時、日本で書かれた小説があることを知った。 http://www.jannu.jp/books/ がそれで、今日たまたまこのサイトに辿り着いて知っ…

「パブー」タグ設置

パブー投稿関連のエントリを今後タグでまとめていくことにしました。 http://p.booklog.jp/users/kkkbest 先日、大学時代のものを修正して投稿しましたが、実は同じ頃に書いたもっと長いもの(1万5000字くらいのもの)を改稿しようと思って7月から見て…

秩序化と非秩序化

深水黎一郎『最後のトリック』(河出文庫。メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ』の改稿版)巻末の島田荘司による解説を読んでいたら、単なる解説というより推理小説という運動をめぐる小史となっていたので驚いた。こうした解説になじんだ向きにはいさ…

「語りえないものの上で擬音語が花盛り」

以下は夢で見た話。 ネット上の某所に、次のようなことが書かれていた。 文学的概念としての失語体験はほとんどの場合、通俗的にしか理解されていない。その例としては、〜、〜(このへんでネット上から何人かの発言を引用)などに顕著である。彼らは「失語…

『Before mercy snow 田波正原稿集』を読む

1 去年のうちに入手していたものの、レビューされている作品になじみが薄い(主にSF)ことからチビチビと読んでは残していた『Before mercy snow 田波正原稿集』(名古屋大学SF研究会、2013)を、ようやく頭から一気に通読した。収録原稿は名大SF研の機関誌…

九月に読んだもの

倉阪鬼一郎『不可能楽園〈蒼色館〉』『八王子七色面妖館密室不可能殺人』講談社ノベルス 前者は『四神〜』以降、館ものと毎年交互に刊行されていたバカミスシリーズかつ上小野田シリーズの最終作。もっと出ているような気がしていたが、三作目。後者とともに…

彼女は美しかった

2008年に、所属していたサークルの競作ショートショート企画に出したものです。 テーマが「赤」でまったくネタが浮かばず困っていたところ、アルバイト先でsyrup16gの「she was beautiful」を聴いてとっかかりを得たように思います。 それが締め切り三日前く…

【記録シリーズ18】再びネタバレについて

ネタバレの忌避とそれに対する批判 「ネタバレ」をめぐる議論への違和感についてはこれまでもこのブログやTwitterなどで時々にぽつぽつ書いてきた。しかしなぜ自分がこれほど「ネタバレ」に引っかかるのか、今でもよくわからない。もちろん、もともとミステ…

Don Caballeroの初期作

Don Caballeroの初期作集『Five Pairs of Crazy Pants. Wear’em』が出ていたことに気づく。 http://chunklet.bandcamp.com/album/five-pairs-of-crazy-pants-wear-em (ドラムのデーモン・チェ率いる彼らの評価や経歴についてはWikipediaだとかそのへんhttp:…

八月に読んだもの

にわかに忙しくなってきたので少しだけ。 倉阪鬼一郎『波上館の犯罪』(講談社ノベルス、2014) 発売から十日ぐらいして購入したものの、それまでに先行の読者から本作の仕掛けにはだいぶ賛否両論ある様子が伝わってきた(「お疲れさまです」派と「これまで…

死んでいるということ

syrup16gを最初に聴いたのは確か『COPY』が出た時にラジオから「生活」が流れてきたので、僕は当時中学生だったと思いますが「存在価値」がどうとかなんとか、言葉のクラーイ感じにむしろ(中学生だからこそ)反発を覚えて、「いやこれはスゴイよ」とハマる…

すべてがFになる/adebisi shankの三作目

森博嗣作のS&Mシリーズが十月からドラマ化。 http://www.sanspo.com/smp/geino/news/20140825/oth14082505040007-s.html何よりビックリしたのは、自分が当時の萌絵の年齢をとうに過ぎいつの間にか犀川に近づいていたということ。金田一少年の事件簿方式で二…

七月に読んだもの

読者メーターが億劫になってきたので、さいとうななめさんのブログ「ななめのための」の「摂取記録」というコーナーを勝手にパクって、見たり読んだりしたものに簡単にここでコメントを付していくことにします。 いつまで続くかは保証できません。 ※ 詠坂雄…

李博士のポンチャック

李博士(イ・パクサ)のポンチャックを初めて聴く。韓国の歌手だが、日本では90年代半ばに一瞬だけ流行っては去って行った徒花的スターということで、リアルタイムのリスナーに逸話をいろいろ教わる。短期間にCDが次々と出た、電気グルーヴ武道館公演の前…

殊能将之を再読する/『黒い仏』(5)

【殊能将之『黒い仏』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 『黒い仏』はどのようにして書かれたのか 前回、新しい書き手に出てきて欲しい、ということを述べたので、『黒い仏』がどのようにして書かれたのかを私なりに推測してみたい。と…

周木律『双孔堂の殺人』を読んだ

『双孔堂の殺人』は、メフィスト賞を受賞したデビュー作『眼球堂の殺人』に続く第二作。発売(2013年8月)から割とすぐに読んだものの、期待と異なり、じっさい評判も前作よりいくらか良くないようなので、特に何も感想を書かなかった。しかしあまり具体的な…

殊能将之を再読する/『黒い仏』(4)

【殊能将之『黒い仏』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 差異をめぐる眼差しについて 差異をめぐる眼差しは、作中のいたるところにばらまかれている。大陸と日本のあいだで没した円載、区別のつかない二つの曲、カバー曲、回文メニュー…

スノー・マジック・ファンタジー

先の冬、某CMとそれに使用された某楽曲の話題でえらく盛り上がったことがあり、 「みんなで●●●●トリビュート小説を書こう!」 と軽い気持ちで呟いたら、 「じゃあお前が書けよ」 とある方から言われました。 「まあ、そのうち……」 と思っていたら冬が終わっ…

殊能将之を再読する/『黒い仏』(3)

【殊能将之『黒い仏』の趣向に触れていますので、未読の方はご注意ください】 「軽さ」について 『黒い仏』には、それまでの二作と比べてある「明るさ」、それも「軽さ」から通じてくるような「明るさ」を感じる。しかし「軽さ」なら、『ハサミ男』や『美濃…

【記録シリーズ17】イニシャル

つい先ほど、ある人物と自分のイニシャルが同じだということに初めて気がつき、夜道を歩いていた最中だったが、ふと衝撃を受けて、立ち止まった。 なぜなら私はこの日、昼から、様々な暗合について考えていたため。そして、その人物と関係の深い別の人物に手…

城平京『虚構推理 鋼人七瀬』を読んだ

「城平京、面白いよ」 人からそう薦められたのはもう十年近くも前だが、先々月、『虚構推理 鋼人七瀬』(講談社ノベルス、2011)で初めてこの著者の作品を読んだ。なかなか興味深かった。しかし本書をめぐっては賛否両論あることを事前にいろいろと聞いてお…