TBCN

襤褸は着ててもロックンロール

インフルエンザだぞ私は

そろそろ引っ越そうというのに帰省先でインフルエンザにかかって、三日寝たきりでもちっとも回復しないし、高校時代は一日休んだらスッキリしたもんだけどな、こりゃあ体力が落ちたか、と考えると先が思いやられるし、そうボヤいてる間にも膨らんだ両目の奥がジンジン、頭はガンガンで本を読むのも辛く、忙しいのに坦々と読書をこなすトキネムル君が偉く感じられるんである。
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そんな中読んだのが草野唯雄の『蔵王山荘連続殺人事件』で、何でこんな陰気なもん手に取っちゃたんだろ、因果なものだ、と思いつつも感想はまあ普通。エロもグロもないしね。
鉱脈を発見して成金になった「プラチナ婆さん」が亡くなり、七億超の遺産が分けられることになるのだが、遺言の発表と葬儀は死後10日を待て、それまでに山荘を出て行ったものは相続資格を失う……という命令が下る。そして、成金になる以前には婆さんを虐待していた家族が、次々殺される。婆さんの自殺未遂を助けた根の優しい末っ子の守は、母親の成功を知らず、住所不定のまま街でフラフラしていたのだが、彼にも魔の手が……。
「こりゃー、こういう真相じゃないか」と思ったら途中まではその通りで、そこからまた一ひねりある。けどそのヒネリもいま一つで、警察はすぐ分かりそう。やっぱりこの前読んだ土屋隆夫『危険な童話』の方が上手ですな。
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草野唯雄ってまだ2作しか読んだことないのだが、『甦った脳髄』のインパクトが強烈すぎる。『脳髄』は『本の雑誌』の霜月蒼氏のイヤミス紹介コーナーでも取り上げられていたが、あの短編集は凄すぎる。しかも解説者が平然として、「草野氏は科学的知見なども取り入れてうんぬん……」などと書いているのもシュール。
もっと読みたいなあ、草野唯雄。
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次はもっとフツーな本の感想にしよう。

蔵王山荘連続殺人事件 (角川文庫)

蔵王山荘連続殺人事件 (角川文庫)