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襤褸は着ててもロックンロール

2015-01-01から1年間の記事一覧

四月に読んだもの

よしもとばなな『白河夜船』新潮文庫 ひとに勧められて十年以上ぶりに著者の小説を読んだら、太宰治のようにすーっと染み込んでくる語りで、実際四半世紀前の作品といってもニート生活に漂うバブリー感のほかは古びた感じがしない。新しいあとがきもパワーフ…

アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』

知人が某誌に「都市SF」論を書いていたので、そこで紹介されていた、SFミステリの名作として名高い本書を読んでみた。 舞台は三千年ほど進んだ未来。地球は、先住民である地球人と、かつて地球から銀河の星々へ移民し、高度な文化を発展させて逆に地球人…

『殊能将之読書日記』が刊行されるそうです

前回紹介した殊能将之氏の公式サイトを基にした本が、『殊能将之読書日記 2000-2009 The Reading Diary of Mercy Snow』というタイトルで6月11日に発売されると先週、予告が出ていました。 「katsukura」前号が刊行情報のおそらく初告知となった本書について…

矢部嵩は天才である。(5)――『〔少女庭国〕』

1 卒業式の日、女生徒たちが会場へ向かう長い廊下を歩いていると、ふいに見知らぬ部屋で一人眠っていた自分に気がつく。壁には何やら指令書のようなものが貼り付けられており、「死亡した卒業生」なる不穏な言葉が見受けられる。どうやら、自分たちはここに…

矢部嵩は天才である。(4)――『魔女の子供はやってこない』

四年ぶりの長篇 第三作『魔女の子供はやってこない』(角川ホラー文庫、2013)は、前作『保健室登校』(同、2009)からちょうど四年ぶりに刊行されました。技巧と物語が高度に洗練されたこの小説は、おそらく矢部嵩的世界の現時点での頂点を極める作品で、私…

矢部嵩は天才である。(3)――『保健室登校』

冒頭の描写から 矢部嵩的世界においては、殺人や人体損壊などの残虐かつグロテスクな行為が登場人物にアッサリ受け入れられる場面が少なくない。それを記述する場合、われわれの「日常」において「平易な文章」として通じるものとは異なる書き方が必要なのは…

三月に読んだもの

坂木司『青空の卵』(創元推理文庫) 十年ほど前から散々噂を聞いていたが、確かにキュンキュンする個所多し。ところで、各編の扉裏のポエムは良いとしても、末尾に白ページが2ページ続いたりするのは、いったいなぜなのだろう? 麻耶雄嵩『名探偵 木更津悠…

矢部嵩は天才である。(2)

(承前) その文体 私が矢部嵩botの抜き出した文章に眼を洗われる心地がしたのは、その言葉が磨きぬかれ、紋切り型を脱臼させる独特のユーモアを持っているように感じられたからだ。それは『紗央里ちゃんの家』で感じたのとは異なるものと思った。 ところで…

矢部嵩は天才である。(1)

はじめに 矢部嵩は現代における真の天才であり、その小説は世界文学である。 以上。 ※ とだけ書いて皆様がフムフムもっとも僕も私もそう思うと大賛同の輪が世界中に広がれば万々歳なのだが、残念ながらまだまだ御納得いただけない方もおそらく多いことと思料…

矢部嵩氏の講演会が開かれるそうです

知人が矢部嵩氏の講演会を開くそうです。 ご興味あるかたは是非。 https://twitter.com/tyabekouen/status/577075857837023232 ※ 某氏がブログのデザインを変更していたのに釣られて、私も思い切ってガラッと変えました。

二月に読んだもの

もう今年も六分の一が過ぎたのか。 古野まほろ『絶海ジェイル Kの悲劇’94』(光文社文庫) かつて北山猛邦が「ボールペン一本でも物理トリックに利用することができる」というようなことをインタビューで答えていたのを読んだとき私は感動した。今作の困難…

タグの設置

以前から作ろうと思っていたもののなんだか恐れ多い感じがして一年以上ノビノビになっていたので、えいやっと作りました。 特に再読記事関連は自分で前に何を書いたかを思い出そうとすることがよくあるので。

一月に読んだもの

市川哲也『密室館殺人事件 名探偵の証明』(東京創元社) 鮎川賞受賞作に続く第二作。やっぱり色々と無理が出ていた前作(老年にさしかかった男性の一人称)に比べると、青年を語り手にしていて格段に読みやすい。デスゲームの雰囲気がユルすぎる、という意…

殊能将之の書評集の情報が

季刊誌『かつくら』最新号(2015年冬号)に殊能センセーの書評集が刊行予定との情報が掲載されていると知り(via 千年雪さん)、さっそく見てみました。 といっても、編集者に対するアンケート特集の冒頭に講談社の社員らしき方が寄せた文章中にさらっと一行…

殊能将之を再読する/「鏡の中は日曜日」(4)

作品がリレーするもの(続き) 綾辻行人と同じ京都大学推理小説研究会出身の円居挽は、野性時代2014年6月号の「私の愛する本格ミステリ」特集に寄せて、「私の偏愛ミステリ作品」というテーマに『鏡の中は日曜日』を挙げ、こう述べている。 本格ミステリの華…

二十歳

久しぶりに一発ネタのショートショートを書いたので、アップしました。初めてスマートフォンのテキストエディタアプリを使って書いてみたんですが、10枚のものをだいたい五、六時間で書いたと思います。内容はスマートフォン中毒の二十歳の大学生の話です…

十二月に読んだもの

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 小島信夫『月光・暮坂 小島信夫後期作品集』(講談社文芸文庫) 死去直前まで本人も携わっていた短編集で、「後期」といっても九十年代までの作品を収録。『対談・文学と人生』の話から書くこ…