TBCN

襤褸は着ててもロックンロール

「四十日と四十夜のメルヘン」をめぐる四つの感想(その2)

単行本 単行本版を読んでみると、文庫版にはなかった記述がいろいろ見られたため、「改稿のさい、かなり削ったのでは?」と思った。そこで、3バージョンの文字数を「1行あたりの字数×1頁あたりの行数(×段組数)×頁数÷400字(=原稿用紙換算)」で概算な…

「四十日と四十夜のメルヘン」をめぐる四つの感想(その1)

先日、青木淳悟のデビュー作「四十日と四十夜のメルヘン」で読書会を行ったというKUSFA http://blog.kusfa.jp/article/270788369.htmlの方から、この作品どう読みました、と聞かれて「ウッ」とつまった。単行本の『四十日と四十夜のメルヘン』を6年くらい前…

『円朝芝居噺 夫婦幽霊』を読んだ。

辻原登『円朝芝居噺 夫婦幽霊』で読書会。私は当初、全編を楽しく読んだ。「夫婦幽霊」本編が終わった後の、「訳者後記」〜「円朝倅 朝太郎小伝」の部分、つまり全体の終盤、オチに関しては、駆け足の感もあり、「ここが評価の分かれ目かな」と思っていた。…

アリバイづくり

更新の穴埋めに、ちょうど2年ほどまえに、読書コミュニティサイト「たなぞう」に2つだけ書いた感想を少し修正して上げておく。 ※●名探偵モンク モンク、消防署に行く (ソフトバンク文庫NV) 《米の人気推理ドラマのノベライズ第一作。ドラマの脚本家(推理作…

パラソルの微風――今年買った本で良かった装幀

あれ、もう12月か……。 「クリスマス・ファシズム」という言葉は、恋人のいないもてない男が半ば自虐ネタ気味につぶやくもの――という理解なのだが、そう言う男は結構敏感ではないかと思う。気にしなければまったく気にならないし。繁華街に出かけずテレビも見…

ウッドハウス漫画

現在のP・G・ウッドハウス翻訳隆盛の端緒となった『比類なきジーヴス』が、国書刊行会から3巻シリーズの第1巻目として出たのが2004年の秋だから、ほぼ5年が経とうとしている。その間に国書刊行会をはじめ文藝春秋、集英社と、10冊以上が訳され、勢いは…

1980年代の福音館書店

最近はロクに本も読まずに、適当な引用・感想で逃げてばかりですが、今回も逃げます。(いやホント、土岐眠君のマメさは凄いわ……) ※ 唐突だが、漫画のタンタン・シリーズが大好きだ! 貴方はご存知だろうか? タンタン。 フランスの新聞連載漫画で、青年記…

インフルエンザだぞ私は

そろそろ引っ越そうというのに帰省先でインフルエンザにかかって、三日寝たきりでもちっとも回復しないし、高校時代は一日休んだらスッキリしたもんだけどな、こりゃあ体力が落ちたか、と考えると先が思いやられるし、そうボヤいてる間にも膨らんだ両目の奥…

続・文庫化

『快楽の館』来月、河出文庫化か……。 比較的手に入りやすい作品なのがナンだが、なぜこのタイミング……。 あと坪内祐三『ストリートワイズ』 講談社文庫化も謎……。『どうで死ぬ身の一踊り』文庫化で解説を書く際にそういう話があったんだろうか。 また『ダブ…

『柔らかい土をふんで、』文庫化

金井美恵子の『柔らかい土をふんで、』が文庫化された。巻末に『新潮』編集長の矢野によるインタビューが載っている。 去年でた『昔のミセス』の「あとがき」では健康問題が心配されたので、皮肉で意地悪な調子も戻って、お元気そうで何より。 『新潮』2008…

解体と気晴らし

綺譚集 (創元推理文庫)作者: 津原泰水出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/12メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 25回この商品を含むブログ (26件) を見る津原泰水の文庫になった『綺譚集』をパラパラめくってたら、最初の「天使解体」はどうもどこかで…

王貞治と津村記久子

確か先々週の『週刊読書人』に、津村記久子の、芥川賞ではなく野間文芸新人賞授賞式のコメントが載っていて、(作品は『ミュージック・ブレス・ユー!』、本賞は町田康『宿屋めぐり』、児童文芸賞は工藤直子『のはらうたV』)記憶で書くのだが、こういうこと…

ミュージシャンとアーティスト

大野佐紀子氏の『アーティスト症候群 アートと職人、クリエイターと芸能人』は、文芸誌の広告に結構載っていて、気になって読んだ。私は以前から、なぜミュージシャンが「アーティスト」と呼ばれるのか不思議だった。「ミュージシャン」や「バンド」「グルー…

恒川氏と沖縄

「夜市」でホラー大賞を受賞してデビューした、恒川光太郎氏の公式ブログが最近オープンしたということで、調べてみた。 が、全然出てこない……。 googleで調べてもわからないし、Wikipediaにも載ってない……。 ということで、2chで調べたらわかった。 「コウ…

いつの間にか芥川賞・直木賞の候補作が出ていました。月日は早いものです。 芥川賞 ・鹿島田真希「女の庭」(『文藝』2008年秋号) ・墨谷渉「潰玉」(『文学界』2008年12月号) ・田中慎弥「神様のいない日本シリーズ」(『文学界』2008年10月号) ・津村記…

サークルの皆様方が年間ベストを出しているので、私も読んだ本から年間ベストを出してみる。 書評誌とかだと「2008年の収穫」とかになるのだろうか。 なぜ「収穫」というのだろうか……。 基本、今年出た本だが、去年出たものも。小説 ・飛鳥部勝則『堕天使拷…

短篇奇賊を主催するとば君に勧められて購読に応募http://blog.bk1.jp/genyo/archives/2008/11/post_1457.phpした花輪莞爾『悪夢百一夜』だが、今日やっとお受け取りした。 今回の領布でもらった人は皆そうだと思うが、まず、パッと開いたときの金文字のサイ…

サイン本をつい

サイン本というものをつい買ってしまった。 『映画崩壊前夜』(青土社 2008)である。 四条のブックファーストで先月、サイン本フェアをやっており、道尾修介、柴崎友香、古川日出男……と現代小説家の本がズラーっと並んでいる中(吉増剛造だか入沢康夫だかも…

法水金太郎さん

横山茂雄=稲生平太郎氏について検索していたら、彼にはバラード『残虐行為博覧会』を、法水金太郎名義で訳した仕事もあった。この名前はやっぱり、小栗虫太郎のシリーズ探偵・法水麟太郎からきているのか? といっても、本になっているのはこの一冊しかない…

感想・田中達治『どすこい出版流通』

「本の雑誌」その他で紹介されるまで、私はこの本についても、出版・書店業界では有名人だったという田中達治氏についても知らなかった。田中氏は筑摩書房の営業担当者であり、同社の新刊案内に連載していた「営業部通信」のエッセイをまとめたのが本書だ。 …

魚雷の目につられて

奈良美智氏の表紙が目をひく、筑摩書房のPR誌「ちくま」で、今年から荻原魚雷氏の「魚雷の目」という連載エッセイが始まった。 それまで荻原氏について何も知らなかったのだが、うーん、古本ライターというのだろうか? そういう方らしい。 不定期連載で、…

蘇る『歌の翼に』

殊能将之氏のサイトで、 「わーすげーっ!!! と騒いでみました」 と書いてあったから「何だろう。また『キラキラコウモリ』みたいなパターンか……」と思っていたら、トマス・M・ディッシュの『歌の翼に』を国書刊行会が復刊するという。 やったね。 ディッシ…

あらら

今年のBunkamuraドゥマゴ文学賞は中原昌也の『中原昌也作業日誌 2004→2007』だ。 最初にその受賞を知ったのは、大阪は淀屋橋にあるBook1stだった。決まって本当に間もない頃で(受賞が3日で、淀屋橋に行ったのが確か4日だ)平台に『作業日誌』が3、4冊積んで…

追悼……

もうかなり遅くなってしまったが、小説家の向井豊昭が6月30日に肝臓ガンで亡くなっていたことを今日初めて知った。 今出ている『群像』10月号の「侃々諤々」は、赤塚不二夫追悼として、四コマ漫画に赤塚漫画のキャラが文壇風刺っぽい台詞を入れていく、とい…

彼女(たち)について……

古本でも文庫版(2002)に出会えないので、金井美恵子『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』(2000)を単行本で買った。 単行本も今やあまり見かけないのだが京都の有名個人書店、三月書房で「定価から60%引き」のセール価格だったので、手に…