立ち読み師たちの街

襤褸は着ててもロックンロール

ミステリ

周木律『双孔堂の殺人』を読んだ

『双孔堂の殺人』は、メフィスト賞を受賞したデビュー作『眼球堂の殺人』に続く第二作。発売(2013年8月)から割とすぐに読んだものの、期待と異なり、じっさい評判も前作よりいくらか良くないようなので、特に何も感想を書かなかった。しかしあまり具体的な…

城平京『虚構推理 鋼人七瀬』を読んだ

「城平京、面白いよ」 人からそう薦められたのはもう十年近くも前だが、先々月、『虚構推理 鋼人七瀬』(講談社ノベルス、2011)で初めてこの著者の作品を読んだ。なかなか興味深かった。しかし本書をめぐっては賛否両論あることを事前にいろいろと聞いてお…

殊能将之を再読する/『黒い仏』(2)

21世紀初頭の評価について 『黒い仏』は現在、一種の“奇書”として知られているが、2001年1月に刊行されたこの本を私はリアルタイムで読んではいないので(2003年頃だった)、当時どのように評価されたのか正確なところがよくわからない。そこで、年末ランキ…

「ハサミ男の秘密の日記」に関する推測

admiralgotoさんがまとめられたTogetter「殊能将之『ハサミ男の秘密の日記』を読まれた方の反応」を、なぜか勝手に更新させていただく(僭越ながらまとめさせていただいた皆さん、無断ですみません)。 作家の死後、消失した公式サイトの内容の復活や、友人…

続・連城さんは……

連城三紀彦氏が亡くなられたという(2013年10月19日)。 もう五年ほど経つのか、以前ここに、「国文学 解釈と鑑賞」の「特集・現代作家と宗教 仏教篇」の連城論を読んだとメモしたことがあった(論文の筆者は横井司氏)。 その時の最新刊は、出たばかりの『…

殊能将之を再読する/『美濃牛』(4)

【殊能将之『美濃牛』の展開について触れていますので、未読の方はご注意ください】 ※ 夜の力、昼の力 横溝作品が“暗い”いっぽう、『美濃牛』は“明るい”といわれる。しかし注意して読むならば、金田一ものでも殺人事件の渦中とは思えないほどのんびりした雰…

殊能将之を再読する/『美濃牛』(3)

【殊能将之『美濃牛』の展開について触れていますので、未読の方はご注意ください】 ※ 迷路の中/外へ 前回引用した、「平易な文章」を書く「頭がいい」作者の系譜は、一種の文学論といえるだろう。しかし他方で、「頭がいい」作者については後年、このよう…

殊能将之を再読する/『美濃牛』(2)

【殊能将之『美濃牛』の展開について触れていますので、未読の方はご注意ください】まず前回、だいぶ酷い勘違いを一点書いてしまったのでその訂正を。 前回、『美濃牛』の叙述形式に関して、「三人称・多視点・現在」だと書き、また〈『美濃牛』において、語…

殊能将之を再読する/『美濃牛』(1)

【殊能将之『美濃牛』の展開について触れていますので、未読の方はご注意ください】 第二作『美濃牛』をどう受け止めていいのか、迷う人も多いようだ。かくいう私もその一人で、横溝正史へのオマージュにしてシリーズ探偵石動戯作の初登場作品である、作者の…

発言紹介いくつか

殊能将之作品のひとり再読企画でいまいろいろと読んでいるんだけど、第二作『美濃牛』は実は一番ピンと来ない作品なので、どう読んだらいいんだろう、と迷っているところ。最も根本的な部分である「なぜ、いま(刊行は2000年)横溝正史なのか?」というとこ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(4)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 対話とズレ 殺人というのは存在を非存在へと変質させる絶対的な暴力で、どうしてかはわからないが、「わたし」はそうした暴力を振るわずにいられない。先述の「ユリイカ」(1999年12月号)のインタ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(3)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 ※ SCISSOR MAN and OUR MUSIC 先日、たまたま山城むつみ『ドストエフスキー』という本を読んでいたら、ゴダールの映画『アワーミュージック』についての記述に出くわした。それは、映画内でも重要な…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(2)

【『ハサミ男』の真相に触れていますのでご注意ください】 ※ SNIP and SHOT さて約束のハサミ。昨年、後藤明生の『挾み撃ち』(1973、現在は講談社文芸文庫)という作品を再読した際、「これは何か『ハサミ男』に通じるものがあるのではないか」と漠然と感じ…

殊能将之を再読する/『ハサミ男』(1)

殊能将之氏が亡くなられたという。 2013年2月11日。49歳。現存する作家の中では最も敬愛する一人だった。 このブログでは以前、『鏡の中は日曜日』と『子どもの王様』について読み返した感想を書いたことがあるが、訃報を聞いて久しぶりに『ハサミ男』から再…

a day in the life of mercy snow

ミステリ作家の殊能将之氏が亡くなられたということで、旧作を再読しつつ、現在は失われた公式サイト「a day in the life of mercy snow」の記述を振り返っている。 去年の夏、so-netからは削除されたが、インターネット・アーカイブで旧アドレスを入力すれ…

続・米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』を読んだ

前回に続き、作品についてネタバレしていますので、未読の方はご注意ください。 恋愛について 作中、「強姦魔」と比較して語られる存在がある。名探偵だ。「論理」を語る者としての「名探偵」の存在の限界や疑問はこれまで、ある時は告発的に、ある時は滑稽…

米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』を読んだ

「一昔前のメフィスト賞系を思わせるトンデモミステリ」とここのところ一部で話題になっていたので、米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』(HJ文庫、2013)を読んだ。 いわゆる「ライ…

『子どもの王様』讃

殊能将之は作中の博識や「ミステリ」ジャンルに対する批評的なスタンスおよびトリック、俗なユーモアなどでいわゆる「クセモノ作家」としてその読者には受けとられていると思うが、〈かつて子どもだったあなたと少年少女のための――〉と銘打たれるジュブナイ…

つらつらと10:「驚きの減衰」について

エラリー・クイーンの長篇を読みながら。>と書いてから四ヶ月、まだまだ全くクイーンについて書けそうにない。 というわけで、また別の話題にしよう。 今日たまたま、荻原魚雷氏のブログ文壇高円寺の最新エントリと、雑誌「メフィスト」最新号に掲載された殊…

つらつらと9:続々・「ロジック」を読むことについて――『離れた家 山沢晴雄傑作集』を読む

【『離れた家 山沢晴雄傑作集』収録作品の真相について若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) だんだん自分の手に負えなくなってきた気もするが、まとめてみよう。 しかし、前回の「複雑さ」という言い方も大雑把だ。私はそれが、どの…

つらつらと8:続・「ロジック」を読むことについて

久々にこの話題に戻ってみた。 ミステリの「ロジック」の周辺について、いわゆる「後期クイーン問題」などとは別の面から考えてみたいと、個人的に思っている。 ミステリの「ロジック」は、ミステリファンのあいだでも、一種のリトマス試験紙のようになって…

続々・自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※松尾詩朗『彼は残業だったので』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) ・幻想ミステリとして読む 前回紹介した「著者の言葉」に「幻想的な謎」という語があるけれど、ほとんどのミステリはある程度、幻想性を含んでいる。…

続・自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※松尾詩朗『彼は残業だったので』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】 (承前) 引用が続いたついでに、もうひとつ引いておこう。 これは後藤明生が小説論のなかに書いていた言葉ですが、「読んだから書いた」というのが、小説家と…

自意識そしてユーモア――松尾詩朗『彼は残業だったので』を読む

【※倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』の真相に若干触れていますので、未読の方はご注意ください】「ロジック」について書きます、と宣言したきりになってしまっているけれど、なかなか進まない(おお、また一か月が過ぎた)。その間に、松尾詩朗『…

挑戦とバカミス――倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』について

恥ずかしい。前回のエントリのことだ。返す返すも未熟な感じがする。しかし今更消去するのも変だし、先に進まないような気もするから、とりあえず残しておこう。 今日は少しいつもの流れを止めて、最近読んだ作品について、思ったことを少し。 ※ 【※倉阪鬼一…

つらつらと7:「ロジック」を読むことについて

「次回はたぶん、ヴァン・ダインの話です。」 などと思わせぶりなことを書いたけれど、やっぱりそれは準備が整ってからにしようかと思う。で、長くなるかもしれないが、今度はミステリの「ロジック」を読むことについて、つらつらと書きながら自分なりに考え…

つらつらと6:ネタバレについて

また一か月以上空いてしまった。 このところミステリ論や詩論を集めていて、その中で買っていた『ミステリの詩学』という本(鈴木幸夫訳編、研究社、1976)に、まさに前回挙げたウィラード・ハンチントン・ライト(=S.S.ヴァン・ダイン)による「傑作探偵小…

つらつらと3:最小のミステリ

昨日、学生時代の先輩に会ったら、「あれたまに見てるよ、ほら、えーと、何だっけ、立ち読み……」と言われた。 現金なもので、少し嬉しかった。 だから、ええいっと更新してしまおう。 ※ 柄にもなく最近のエントリで(続く)等としているのは、これまでにもブ…

ミステリについて、つらつらと

北村薫のエッセイ『ミステリは万華鏡』(角川文庫版、2010)を読んだ。 面白かった。 ミステリについて、非常に根源的な書だと思った。 ※ 最近、ミステリについてつらつらと考えることが多い。 といっても、実作を読むのは以前に比べ少なくなった。この半年…

論創海外ミステリはいま

フーダニット翻訳倶楽部による5年前の横井司インタビューをたまたま見かけたので、興味深く読んだ。 http://www.litrans.net/whodunit/int/ronso.htm あの頃の論創海外ミステリの勢いは凄かった。「大丈夫かこの出版社」というミステリファンの悲鳴のような…